絵本に学ぶ仕事術 ■有限会社ウーヴル 代表取締役 三宅 未穂子
「きみが うまれた日、三人のともだちは やってきた」から始まる絵本。ヘルメ・ハイネの柔らかなタッチの絵とお話で何度でも繰り返し読みたくなる絵本だ。命の八月に贈りたい。
やってきたのは、この三人。
「アタマはかせ」は人の頭にやってきて、人が成長と共に知り得る全ての知識や、体験して得た全ての記憶を、頭の中のカードに書き留めいつでも思い出せるように情報整理の仕事をする。昼夜問わずずっと働いてるから、疲れて間違うこともあるようだ。そうか、時々勘違いするのは「アタマはかせ」が疲れているせいかもしれない。
「ハートおばさん」は左胸にやってきて、心の世話をする。涙でびしょびしょになった心を乾かしてもくれるし、喧嘩して傷ついた心も、よれよれになった心も、いつも優しく世話してくれる。いつの間にか嫌なことを忘れているのは、「ハートおばさん」の手厚いケアのお蔭だ。そんなこともわからずに無視してしまって、感謝することすらできていないことを、この絵本を読みながらいつも思う。
「いぶくろおじさん」は胃に住み、人が味わい食べたものを、体に吸収しやすいようにもう一度料理してくれる腕利きのコックだ。体調に応じて食べる量までコントロールしてくれるから、暴飲暴食は「いぶくろおじさん」にかなりの負荷を与えてるはず。
病気は、この三人が動かなくなるからという。しかも、その三人を唯一助けられるのは医者さん。自分が苦しい時は三人も苦しいんだ。無茶しないで具合が悪ければちゃんと病院にいこう。三人は、ずっとずっと死ぬまで一緒なのだから。
三人は人の死と共に仕事が変わる。どうなるかっていうと、「いぶくろおじさん」は人と共に眠るが、「アタマはかせ」は、他の人の頭を訪ねて生きてた頃を思い出させ、「ハートおばさん」は、生前その人がまいた愛の種を育てて集めて、みんなの心に忘れないように届けて刻んでいくのだ。
亡くなった人のことを思い出すのは「アタマはかせ」と「ハートおばさん」がやってきた時。
八月は誰かを偲ぶ季節。きみたちのことを忘れない。あなたの命を忘れない。ひみつの三人がきっと忙しいことだろう。
私たちはこの三人に命を守られて生きてるという秘密を知っておいた方がいいだろう。
『きみがしらないひみつの三人』
作・絵: ヘルメ・ハイネ
訳 : 天沼 春樹
出版社: 徳間書店
「絵本に学ぶ仕事術®」 Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.158(2024年8月号)
プロフィール
三宅 未穂子(みやけ みほこ)
有限会社ウーヴル 代表取締役
2005年2月25日創立、翌06年3月15日同社設立。企業向け研修やキラキラ社員のプログラム(社員によるいい仕事のための自社内研修プログラム)業務改善アドバイスを手掛けている。
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