絵本に学ぶ仕事術 ■有限会社ウーヴル 代表取締役 三宅 未穂子
想像してほしい。静かな森にある大きな池。池の真ん中に広がる睡蓮の葉っぱ。その1枚に、2ひきのカエルがいる風景を。
1匹のカエルは、棒きれを持っている。もう1匹のカエルが「なんで また、そんな ぼうきれ かかえてるのさ」と聞く。物語が始まる。
なんでも棒は犬除けの棒らしく、とびかかってきたらやっつけるためのものらしい。
犬なんてこの辺りで見たこともなければ、さらに犬が池の真ん中まで泳ぎたいもんか!と掛け合いが始まる。
「ほーお!じゃあ、いわせてもらうがよ。もし、犬とさんぽにきたやつが、ぼーるをここまでなげてよ、『さあ、ボールをとっといで』っていったらどうすんだ?(中略)」
「はーっ!あっ、そう。だけどさ」(本文から)
と、こんなに広い池、遠くまでボールを投げるやつも、泳げる犬もいないとやりかえす。テンポの良いやり取りがまるで漫才のツッコミとボケのよう。半面、写実的で媚びないリアルな絵がいい。カエルの表情は、静止画ではなく、まるで動画だ。
結局その棒は、犬ではなくカエルを襲ってきたカワカマスと、アオサギから身を守ることになった。
こうして運よく棒きれで命を救われた2ひきのカエルがいなくなった後、実はあり得もしないと思われたことが起こった。「ボール投げの世界チャンピオンが池の真ん中まで投げたボールを、およぎが大好きな犬が泳いで取りに行く」がリアルで起こったのだ。
この絵本から「未来予測」というコンセプトが立ち上がった。自らを「社会生態学者」と位置づけていたドラッカー博士は、未来予測は「すでに起こってしまった変化を確認すること」と言っている。
そして「未来について 言えることは、2つしかない。第1に未来は分からない、第2に未来は現在とは違う」(『創造する経営者』)。
未来はわからない。けれど、現在とは違う」と棒をもったカエルは意識しただろう。
そんなこと起こりっこないと笑ったカエルは、犬でなくても自分たちは狙われることを知っただろう。「備えあれば憂いなし」は、未来をどう考えるかによって起こる行動だ。
組織の全員がこのような観察眼をもって、「そのぼうきれ、どうすんだ」と言える環境をつくり、その都度適切な選択で、最適な行動をすると、組織はもっとステージアップする。そう思わせてくれる1冊だ。
『2ひきのカエル そのぼうきれ、どうすんだ?』
作・絵: クリス・ウォーメル
訳 : はた こうしろう
出版社: 徳間書店
発行 :2022年
「絵本に学ぶ仕事術®」 Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.159(2024年9月号)
プロフィール
三宅 未穂子(みやけ みほこ)
有限会社ウーヴル 代表取締役
2005年2月25日創立、翌06年3月15日同社設立。企業向け研修やキラキラ社員のプログラム(社員によるいい仕事のための自社内研修プログラム)業務改善アドバイスを手掛けている。

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