絵本に学ぶ仕事術 ■有限会社ウーヴル 代表取締役 三宅 未穂子
今月は、なぜ職場において「情報が正しく伝わらない」という問題が生じるのかを考えるのに最適な絵本を紹介する。
物語の舞台は電線の上。ハト、オウム、インコ、ダチョウ、ペリカン、カモ、カラス、ふくろうなど、実際にはとまるはずのない鳥たちのシルエットが並ぶ、印象的な見開きの街並みから始まる。
ハトのお母さんの「そろそろ ばんごはんだからかえっておいで」というメッセージを、息子のピーターに届けるため鳥たちが次々に伝言していくというストーリーである。
最初にメッセージを受け取った赤い鳥は、次の鳥に「そろそろ ばんごはんだから ええっと……ホームランをうって、はやくかえっておいで」と伝えた。その鳥は野球のバットを持っている。フライトキャップをかぶった鳥は「ひこうきにのってかえっておいで」と次の鳥に伝える。こうして、各々の関心に応じて伝言が変化し、ついには原型を失って意味不明になっていく。これはもしかすると、情報が組織内で正確に共有されない要因を視覚的現わしてる?と思うと笑えない展開だ。さて、ピーターのもとにはどんなふうに伝わったのか。それは、実際に絵本を読んでのお楽しみとしたい。
ここから、伝言ゲームがうまくいかない理由の一つとして、人が情報を自分の関心や経験に重ねて解釈してしまう傾向があることを学ぶことができる。こうした現象は、心理学者フレデリック・C・バートレットによるスキーマ理論「人は情報をそのまま記憶するのではなく、自らの文化的背景や知識(スキーマ)に基づいて再構成する」ではないか。
記憶は常に変化するのに加えて、相手は自分の物差しで言葉を捉える。受け取る情報に違いが生じやすいのは当然だ。
そこで、絵本を活用したい。絵本には絵と物語がある。この2つが一体となることで、発信者と受信者共通の視覚的・情緒的背景が出来上がる。「あの絵本」の「あの言葉」「このシーン」と同じ世界を体験できる。その結果、認識のズレが減り、共通理解の形成が促される。こんな素晴らしい体験ができる絵本。職場における有効なコミュニケーション支援ツールとして、大きな可能性を秘めていることがわかるだろう。『でんごんでーす』ぜひ読んでみてほしい。
『でんごんでーす』
文:マック・バーネット
絵:ジェン・カラーチー
訳:林 木林
出版社:講談社
発行:2015年
「絵本に学ぶ仕事術®」 Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.168(2025年6月号)
プロフィール
三宅 未穂子(みやけ みほこ)
有限会社ウーヴル 代表取締役
2005年2月25日創立、翌06年3月15日同社設立。企業向け研修やキラキラ社員のプログラム(社員によるいい仕事のための自社内研修プログラム)業務改善アドバイスを手掛けている。

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