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『わたしたちのケーキのわけかた』

絵本に学ぶ仕事術

本に学ぶ仕事術  ■有限会社ウーヴル 代表取締役 三宅 未穂子

ケーキを分ける。たったこれだけのことが、実はマネジメントの現場に多くの課題を見つける視点が含まれていることに気づかされた『ケーキの切れない非行少年たち』(宮口幸治著)。それは、分け合う場面には、わたしたちの認知と社会性が映し出されるというもの。

均等に分けることは、数量感覚や空間認知といった認知機能を必要とする。形を見て見通しを立て、同じ大きさに切り分けることは、単純そうに見えて高度な思考力があればこそ。だから、境界知能や発達特性を持つ人にとっては容易ではない。
一方で、分けられないものもある。ケーキで言えば大きさが不揃いであったり、ただ唯一のものであったり。絵本ではその対象は、子どもたちが大好きなおじさん、そして、両親。一人占めしたい存在。

絵本は素朴で温かい絵とともに、喜びも痛みも悲しみも失敗も、なんでも分け合ってきた五人兄弟の姿を描いている。作者のあとがきには、次のような言葉がある。

―なんでも分けなければならなかった子ども時代を経て、「わたしだけのもの」が多くなった今、おいしいもの、きれいな景色、いろんなものを「日々の小さな物語を絵本に託してわかちあいたい」―。

完全な公平は存在しない。そのときに問われるのが、アピール力、ポジション取り、スピード、そしてがまん強さ、あきらめない心と絵本が語ってくる。つまり、ここには、人と人が限られた資源をどう調整し、どう折り合いをつけるかという社会性の側面が表れてくる。

認知の弱さを見過ごされた子どもは、分ける力を身につけられないまま成長し、やがて社会で不適応を起こす。しかしそれは「本人のせい」ではなく、支援や教育の不足に起因する。未来は教育次第である。

マネジメントの現場でも同じだ。分けられるもの(役割・予算・時間など)は仕組みとルールで調整できる。しかし、分けられないもの(評価・ポスト・チャンスなど)は対話と調整力がものを言う。公平さをどう保つかは、合理的な認知と人間的な社会性そして、感受性、その両輪によって初めて可能になる。

ケーキを分けるという小さな行為は、わたしたちの認知と社会性を映し出す鏡となった。同時に、組織や社会をどう運営するかの問いでもある。多様性社会を担う組織にとって、教育を考える契機になる絵本であり、多くのテーマを含む良書である。

『わたしたちのケーキのわけかた』

作:キム・ヒョウン
訳:おおたけきよみ
出版社:偕成社
発行:2023年

「絵本に学ぶ仕事術®」   Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.171(2025年9月号)

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プロフィール

三宅 未穂子(みやけ みほこ) 
有限会社ウーヴル 代表取締役
2005年2月25日創立、翌06年3月15日同社設立。企業向け研修やキラキラ社員のプログラム(社員によるいい仕事のための自社内研修プログラム)業務改善アドバイスを手掛けている。

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