絵本に学ぶ仕事術 ■有限会社ウーヴル 代表取締役 三宅 未穂子
子どもだけでなく大人にも人気のアンデルセン童話。原題は「皇帝の新しい着物」から今月は考えたい。
新しい洋服が好きな王様のところへやってきた二人のうそつき。「利口で正直な人にだけ見え、嘘つきや愚か者には見えない布から服をつくる」という。機を織り服を縫う。見えるはずがないのに大臣も家来も、王様でさえすばらしい服だという。そう言うしかない呪縛がかかったまま、披露目パレードの日を迎えた。「おうさまは何も着ていない」の子どもの声で、人々はようやく王様は裸だと認めることができたというお話。
今、先行きが不透明で将来の予測が困難なVUCAの時代と言われる中。日々変化する状況に迅速に対応していくために、教育も従来のインプット型から、組織の誰もが知識を実践知に変えるワーク中心の教育へと転換してきている。時代が動くと課題も変わる。本質的には変わらないけれど、一見すると変わったように見える課題の中核を的確に設定する能力はさらに企業の成長に必須になる。絵本のワークショップも課題設定力が身につく有効な手法の一つ。
今日は「誰が王様を裸の人にしたのだろうか?」この問いから探ってみたい。
愚かなのは王様だけではないはず。わかっていて声にしなかった者たち全員だ。正直さが大切であるという国民性も未熟だった。
未来のために何を為すべきか、為されるべきか。そのためにあらゆる視点から、課題の姿を正しく映したほうがいいはず。フルーツバスケットを真横からみるか真上から見るかで絵が変わるように、一方からの視点では全容を掴むことはできない。また、同調圧力の中では小さな変化の種は育たない。すべて異物として取り扱われるし、思い込みの中では課題の本質は立ち上がらない。あらゆることが予測不可能な状況だからこそ、常に変化する課題を正しく捉えるために、課題を課題と認識できる組織でありたいものだ。
ただ、正直者の声は総じて耳に痛い。それを認める勇気を普段から示していくことも求められるだろう。この童話から組織を機能させるいくつもの仮説が立てられそうだ。
最後に、こんな見方はどうだろう。「はだかのおうさま」は、国民に信頼される王政とは何かを重臣たちに気づかせるため、堂々たるはだかの王様を演じてみせた。と。
ピリリと風刺のきいた話だが絵本は温かい色にあふれている。
『はだかのおうさま』
作:立原えりか
絵:たなか鮎子
監修:西本鶏介
出版社:フルベール社
発行:2016年
「絵本に学ぶ仕事術®」 Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.165(2025年3月号)
プロフィール
三宅 未穂子(みやけ みほこ)
有限会社ウーヴル 代表取締役
2005年2月25日創立、翌06年3月15日同社設立。企業向け研修やキラキラ社員のプログラム(社員によるいい仕事のための自社内研修プログラム)業務改善アドバイスを手掛けている。

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