絵本に学ぶ仕事術 ■有限会社ウーヴル 代表取締役 三宅 未穂子
質問だけで構成されている絵本がある。質問は実にユニークで作者の五味さんワールドにどっぷり浸れるものばかり。しかけいっぱいの絵と共に質問が続いていく。
例えば、こんなことだ。
数軒の家がならぶ絵のページ。質問は、どの家があわれな犬にごちそうをめぐんでくれそうかというもの。一軒一軒の絵を比べてみて、犬の気持ちになって選ぶ。
また、一見して性格までわかってしまいそうな表情の人がずらりと横にならんでいるページ。全員先生である。そこに「宿題をたくさん出すくせのある先生はどのひと?」とか「生徒に人気があるのはどの先生?」などの質問がある。
絵本を読む子どもたちは「この先生は優しいそう」「自信なさげ」「神経質そう」「いばってそう」など、人物の風貌や表情などで、先生を取り巻く背景を想像する。「この人」と指さすだけが質問の答えではなくて、選ぶ理由が大切だ。「じゃ、この人でいいんじゃない?」と言った他人事も、「わからない」という選ばない選択も含めて、自分の意見・意思があって答えになる。そこに「正解」はない。「最適解」があるだけだ。
人の数だけ答えがある。自分とは違う答えがあることを、まず知り合えば、他人の世界を通して、自分の世界をもっと広げられる。
これは何も絵本に限ったことではない。仕事も同じだ。
有名なのが、マネジメントの父と言われるドラッカー博士の「5つの質問」。
第1の質問 われわれの使命は何か
第2の質問 われわれの顧客は誰か
第3の質問 顧客にとっての価値は何か
第4の質問 われわれの成果は何か
第5の質問 われわれの計画は何か
最初から全員一致の答えを導き出すのではなく、繰り返し問うことで原点に戻れる質問だ。さらに、一人では答えることは難しいと思えても、チームメンバーとなら答えが見つけやすいかもしれない。それに、初めは最適解であっても、対話を続けることでやがてそれは私たちの真の答えとなるだろう。
この質問に答えるためのウォーミングアップが必要だったら、今月の絵本である五味さんのポップな絵と質問に答えながら練習することはできるはずだ。
私たちの日常は、多くの選択の繰り返し。選択する目を養うためにも、質問に答える力を身に着けたい。
『質問絵本』
作・絵: 五味 太郎
出版社: ブロンズ新社
発 行:2010年
「絵本に学ぶ仕事術®」 Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.155(2024年5月号)
プロフィール
三宅 未穂子(みやけ みほこ)
有限会社ウーヴル 代表取締役
2005年2月25日創立、翌06年3月15日同社設立。企業向け研修やキラキラ社員のプログラム(社員によるいい仕事のための自社内研修プログラム)業務改善アドバイスを手掛けている。

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