絵本に学ぶ仕事術 ■有限会社ウーヴル 代表取締役 三宅 未穂子
般若心経の最初の三文字「観自在」。人は目の前に立ち現れるすべてのことを自在に観じ、自分の見たいように解釈している。人によって受けとめ方は異なり、同じ出来事でもまったく違う意味を帯びて感じられるのだ。自分の考えの枠しか見えなければ、景色は狭まる。人は自ら、自分の可能性や成長を難しくしているのかもしれない。自我で固まったその心の癖を「空」や「無」に変えるために、まだ開けたことがないドアを開くとしたら‥。
仕事の現場でも同様に、出来事をどう解釈しどう受けとめるかによって、判断や行動は大きく変わる。解釈を誤れば変化に遅れ、成長の機会を失う。パラダイムを転換するとは、仕事において新しい選択肢を見出すことにほかならない。
今月の絵本『たくさんのドア』は、パラダイムシフトとはドアを開けること‥と語りかけてくる。物語は子どもの成長を描いているが、組織や仕事にも重ねられる。文中の「あなた」を「私たち」に置き換えると、マネジメントに読めてくる。「あなたは どんなひとになり いったいどこへいくのだろう。どうやってこたえをみつけていくのだろう」この一節を「私たちは、どんな組織を目指し どうありたいのだろう。今の最適な答えはなんだろう」と読み替えれば、仕事の課題を指す。
書名は『たくさんのドア』だが、ドアは一つも描かれていない。描かれているのは、グリーンの濃淡に、オレンジ・茶・黄が差し色の温かな世界。中ページから、小さな子どもの冒険物語のようにも読める。子どもにとって、好奇心と小さな感動の日々は冒険であり、いろんなドアを開くこと。そうして人は成長していく。
どれだけドアを開き続けても、受けとめ方――つまり「観自在」の意味を知らなければ、次のドアも同じ景色だろう。大人になるにつれて、見た目は変わった形をしていても、実は同じドアを何度も開いているのかもしれない。もしそれが思い込みや執着、自分の考え方の癖だとしたら。もしそれが、変えたくても変えられない組織の習慣だとしたら。
そう考えると、人財教育とは「観自在」を知ることなのだと思い至った。ドアが開いた瞬間だ。しかし、知識を与えるだけでは人はドア開かない。必要なのは、社員が安心して挑戦できる場であり、互いの学びを分かち合う文化なのだろう。
『たくさんのドア』
著 :アリスン・マギー
絵 :ユ・テウン
出版社:主婦の友社
発 行:2018年
「絵本に学ぶ仕事術®」 Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.172(2025年10月号)
プロフィール
三宅 未穂子(みやけ みほこ)
有限会社ウーヴル 代表取締役
2005年2月25日創立、翌06年3月15日同社設立。企業向け研修やキラキラ社員のプログラム(社員によるいい仕事のための自社内研修プログラム)業務改善アドバイスを手掛けている。

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