絵本に学ぶ仕事術 ■有限会社ウーヴル 代表取締役 三宅 未穂子
『ルピナスさんは、海みおろすおかの上にある、小さないえにすんでいます。いえのまわりには、あおや、むらさきや、ピンクの花がさきみだれています。ルピナスさんは小さなおばあさんですが、むかしからおばあさんだったわけではありません。世界中を旅行しましたし、「世の中を美しくする」ためにステキなおとを思いつきました』——これは絵本カバーの裏に書かれた紹介文である。
「世の中をもっと美しくするために、なにかしてもらいたいのだよ」。おじいさんと交わした約束を花に託した女性の輝く人生を、静かに描いた物語である。
人類は古くから、天文学や数学を通して自然の秩序を読み解き、哲学や医学、農学、倫理学を通して「よりよく生きるとは何か」を問い続けてきた。その流れの中で十八世紀、ドイツの哲学者バウムガルテンが「美学」という学問を体系化した。美とは何か、美しく生きるとは何かを考えようとした最初の試みである。
美は特定の芸術作品にだけ宿るものではない。空を見上げれば夜空の星・冴えわたる月。季節の移り変わり。日々のささやかな営みの中にも、美しいと感じる瞬間がある。人や組織の在り方、価値観、行動の中にも、美は息づいている。だからこそ、「世の中を美しくするために何かをする」という言葉は、自己満足の美ではなく、他者や社会に喜ばれる行為を指す尊い意味と受け取れるし、まさに、ルピナスさんの生き方は、その象徴だと言える。
例えば、「世の中を美しくする」を理念としたとき、掲げるだけではなく、それを実態に変える日々の小さな行動が大切だ。ルピナスさんは種を蒔き続けた。
また、人が入れ替わっても、仕組みを通じて、理念や文化を次代に手渡すこともできる。時代がどれほど速く進んでも、価値ある理念は消えない。絵本のラストも、少女に種を託している。社会に感謝され、喜ばれる仕事とは、世界を美しくすることかもしれないとさえ思える。
ぜひ絵本を開いてほしい。柔らかな色合いの一面に咲き誇る水色を基調としたルピナスの絵。本当に美しい絵本。ちなみに、ルピナスとは、痩せた土地でもたくましく育つ様子から例えられたラテン語「狼(lupus)」の語源を持つ。(花姿から「昇り藤」とも言われるそうだ)たくましく美しく成長する在り方を現わす花名も美しい。
『ルピナスさん』
著 :バーバラ・クーニー
訳 :掛川恭子
出版社:ほるぷ出版
発 行:1987年
「絵本に学ぶ仕事術®」 Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.173(2025年11月号)
プロフィール
三宅 未穂子(みやけ みほこ)
有限会社ウーヴル 代表取締役
2005年2月25日創立、翌06年3月15日同社設立。企業向け研修やキラキラ社員のプログラム(社員によるいい仕事のための自社内研修プログラム)業務改善アドバイスを手掛けている。

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