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五龍神社(佐賀市)と 櫛田宮(佐賀県神埼市)

神社訪ねある記

エッセー 神社訪ねある記  ■箱嶌 成風 

飛び火して 野狐やこが火付けし 曼珠沙華まんじゅしゃげ

畦道があっという間に赤くなり、またすぐ鎮火してしまう死人花(しびとばな)とも言われる曼珠沙華は得体の知れない秋の火花である。火花の畦を左右に見ながら三ツ瀬のトンネルを抜け佐賀市の五龍神社に向かった。田中氏姓の由来を出版し研究している宇野氏にはどうも気になる古社のようだ。
佐賀市はクリークの中に浮いている。嘉瀬川の流れが網の目のように水脈を巡らせていた。何本もの橋を渡り曲がりくねりながら稲田の中に五龍神社と扁額の架かった石の鳥居を発見。どこからともなく水音が伝わってくる。石の鳥居の奥にご本殿はあった。お社の欄間には色の剥落しかけた龍の彫り物が数体身を乗り出していた。おそらく、極彩色の迫力満点の五体の龍様だったであろう。

「飲明天皇(565年)頃の建立のようです。1450年以前の古いお社ですな。その昔、田中氏を名乗る長者が木製の船で東シナ海の荒波を越え大陸との貿易で儲け、五龍神社を海路のお守りに尊崇したと説明看板に書いてあります。龍とは海流を龍に見立てたのではないでしょうか」
田中氏(たなかうじ)は稲の伝来と供に全国に拡がった大氏族である。その源流がこの地だったのではなかろうか。志賀海神社や風浪官の阿曇(あずみ)氏とともに中国の長江河口から稲と鉄をもたらした移民集団のコロニーだったかも知れない。すると紀元前の話であり、もっと古いことになる。

「神埼市の櫛田宮にも回ってみますか」と宇野氏から言われ、えっと思った。櫛田神社とは山笠と大銀杏の博多の鎮守様しか知らない博多ん者(もん)にとって神埼市にもあるとは魂消(たまげ)たもんである。五龍神社を出て東北の城原川(じょうばるかわ)沿いに大内峠の峠道を背振山に向かって走った。
急に賑やかな長崎街道の神埼宿に出た。街道に接して櫛田宮の鳥居は立っていた。ここでも水の音がする。一面に青藻(あおこ)の浮いた琴の池と言うお濠に川からの流水が落ちていた。岸に鉄柵に囲まれた石の馬像があった。牛の石像はたくさん見かけるが馬の石像は珍しい。高さ1メートルほどの日本馬である。長い前髪にやさしい目をしている。物品輸送には欠かせない運輸手段だったのであろう。神埼宿の馬引業者が奉納したものと後で知った。左手に「琴の楠」と書かれて根元が空洞になった大楠が立っていた。景行天皇が創建され、琴をここに埋められそれから生えたと伝説の齢1000年を越える巨木である。息を止めてこの木を七回り半すれば琴の音を聞くことができると書いてあるがまだ琴の音を聞いた人はいないそうだ。

正面のご本殿には須佐之男神(すさのお)、櫛稲田姫(くしいなだひめ)そして日本武命(やまとたけるのみこと)のご3神が祀られていた。社務所で由来書を頂こうとまわったら、腰に蚊取り線香のブリキ函を背中には落ち葉をくっつけて庭木手入れ姿の執行安正宮司にお会いできた。平安末期、鳥羽天皇にこのお宮の管理を執行するように派遣され29代目になると言われる。大伴・伴家の流れを汲む家系で管理執行(しっこう)の役職が本名になったそうである。作業中であったので半時間ほどの立ち話であったがジョークも交え屈託のない語り口の宮司様であった。
「博多の櫛田神社とはどんなご関係ですか」とお尋ねしたら、「ここと商都博多は川で繋がっていますので元々は出張所であったのが鎌倉時代に分祀されたもの」だそうで言わば本店と支店の関係だったようだ。櫛田神社のルーツに出会って驚きであった。

お礼を言って櫛田宮に頭を下げ門前の長崎街道に出た。長崎と江戸を結んで西洋の文化が運ばれた嘗ての幹線道路である。シュガーロードとも言われカステーラが江戸まで伝わった道でもある。シーボルトも坂本龍馬も歩いたであろう長崎街道を宇野さんと自動車で走った。

五龍神社

住 所 佐賀市鍋島町八戸1054-2
創 建 欽明天皇26年(西暦565)
御祭神 海童神(龍神)

櫛田宮

住 所 佐賀県神埼市神埼町神埼419番地1
創 建 第12代景行天皇の代(1900年余)
御崇神 櫛稲田姫命、須佐之男命、日本武命
URL  https://www5b.biglobe.ne.jp/~kusidagu/

神社訪ねある記  Bis・Navi(ビス・ナビ)Vol.161(2024年11月号)

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著者:箱嶌八郎(成風) 氏
有限会社タオコーポレーション・風水家相タオ設計工房主宰。
福岡市生まれ。当仁小、中学、修猷館高、早大卒。
西日本新聞TNC文化サークル・風水教室講師・もの書き屋・エッセイスト。
・第23回森鴎外記念北九州市自分史 文学賞
・第50回福岡市文学賞
・第3回子母沢寛文学賞「愛猿記賞」 等々大賞受賞。
著作:「されど風水」あり。

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