■繁栄の法則 豪商三井の教え③ 編集人 宇野 秀史
前回は三井家が家(グループ)のまとまりを大事にし、進むべき方向性を一致させるための考え方を紹介しました。
今回は、人材の活用について三井高利の考えをご紹介します。
高利は、その遺訓の中で
「名将の下に弱卒なしという。賢い者や能力のある者の活用に最大限心がけ、下の者が不平や恨みを抱くことがないように注意すべきである」
と語っています。
有能な人材を引き上げ、その者の力を発揮できるよう環境を整えるのがトップの役割であるといっているわけです。
現代の組織運営においてもまったく同じことがいえます。高利は次の言葉も残しています。
「一族の子供は、その者が一定の年齢に達するまでは他の店員と同じような待遇とし、店番・手代の下で働かせること。決して主人と同じような待遇をしてはいけない」
これは、後継者や同族の社員といえども、一から商いを学ばせることの大切さを説いているのですが、同時に、同族だからといって能力のない者を贔屓していては、有能な人材がやる気をなくす。そうなれば、店は衰退するということも示しているのではないでしょうか。
高利の後を継いで三井家をさらに発展させた高平(宗竺)も『宗竺居士家訓』の中で
「一族の者は互いに戒めあって、過ちを犯さぬように努力しなさい。もし、不都合な行為をあえてするような者が出た場合は一族で協議し、ただちにこれを処分しなさい」
といっています。
有能な人材を見極め生かすトップの度量と身内でもあっても信賞必罰の基準を守ることの大事さを教えてくれています。
※参考文献:『商家の家訓』(著者:吉田豊氏)
プロフィール
宇野 秀史(うの ひでふみ)
Bis・Navi(ビス・ナビ)編集人
昭和40年5月生まれ、熊本県出身。熊本県立第二高校、京都産業大学経営学部卒。出版社勤務を経て、独立。2017年7月、月刊ビジネス情報誌「Bis・Navi(ビス・ナビ)」を創刊。株式会社ビジネス・コミュニケーション代表取締役。
歴史の知恵、偉人や経営者が残した知恵を綴る。また、経営者の知恵を後継者に伝える、知恵の伝承にも取り組む。
著書:『トップの資質』(梓書院、共著)、『田中吉政』(梓書院、解説)、『田中の田中による田中のための本』
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