経営者の知恵を後継者に残すことで100年企業の基礎を築きませんか

まったく新しい価値は、常識を超えた先にあります

承前啓後

承前啓後 アイディア編(3)  ■異業種交流会「VAV倶楽部」会長 近藤昌平さん

「気(氣)」という文字にはエネルギーという意味があるように、景気は人々の「気」の大小に影響を受けるようだ。バブルの後遺症を引きずる日本経済の回復を願い、近藤さんが作った「景氣快福ケーキ」(2024年7月号を参照)は、明るい話題を求めていた人々の心を掴み大ヒットを記録した。
そのうち景気が底を打ち、わずかに回復の兆しが見え始めると、人々の気も陽に転じはじめる。近藤さんは「黒字体質ケーキ」と銘打った新商品を開発すると、これまた大きな話題を呼び、「景氣快福ケーキ」と同様、注文が殺到し対応に追われることになる。
近藤さんは、なぜヒット商品を連発できたのか。そこには、新しい価値を生み出す近藤さんの生き方があった。

真っ黒いケーキで、企業の黒字化を応援

景気が続く1990年代中盤、世の中が少しでも明るくなればと願い「景気回復」にかけて「景氣快福ケーキ」を発売すると、大変な評判を呼び嬉しい悲鳴を上げました。
しばらくすると、景気が底を打って好転する兆しが見え始めました。「少しは、皆さんの気持ちを明るくできたからかもしれない」と喜んでいると、メディアを通して、黒字を出し始めた企業のニュースやコメントが出はじめました。そこで、もっと黒字の企業が増え景気が良くなるようにと、新し商品の開発に着手します。

「景氣快福ケーキ」は、真っ白いケーキ。今度は黒字化を表現するために真っ黒いケーキづくりに取り掛かりました。黒色を出すために、イタリア料理などでもお馴染みのイカ墨を混ぜます。アイディアは良かったのですが、イカ墨のにおいに悩まされました。イカ墨のにおいは工場の中に充満し、他のケーキにまでうつってしまい、このままではとても商品化はできません。業界の常識としてイカ墨をケーキに使うなどという発想はありませんから、解決策など用意されていません。自分でなんとかするしかないわけです。何度も失敗を繰り返しましたが、ある日、イカ墨を油でコーティングすることを思いつきました。試してみると、見事ににおいを消してくれました。

一度に10万本超

商品化のめどがたち、商品名を「黒字体質ケーキ」として売り出しました。ご注文を頂いてから作る受注型の販売にすると、大変な人気商品となり生産が追い付かないほどでした。
さらに、「景氣快福ケーキ」とのセット販売を始めると、多くの企業さんから顧客への手土産にしたいと、まとまった数のご注文をいただきました。松下電器さんから新年のあいさつ回り用として、一度に10万8000本ものご注文をいただいた時はさすがに驚きましたね。

「景氣快福ケーキ」と「黒字体質ケーキ」は、世の中の空気から生まれた商品だと思っています。アイディアはどこにでも転がっていますが、それを具体的な形にするには行動力も必要です。特に、世の中にない商品の開発となると、それまでの常識にとらわれない考え方や見方を養うことも必要になりますね。

「黒字体質ケーキ」(右)と「景氣快福ケーキ」(中)。 写真左はセット商品。

まったく新しい価値は、「改善」ではなく「改革」から生まれる。改革はルールそのものを変えてしまう力さえ持つ。近藤さんが世の中にないものを作り出せたのは、常識にとらわれない発想とやり抜く生き方を貫いたからではないだろうか。経営者に求められる資質である。


※「承前啓後」:受け継いだものや知恵を大切にし、未来を切り拓くことを意味する

承前啓後 Bis・Navi(ビス・ナビ)Vol.159(2024年9月号)

プロフィール

近藤 昌平(こんどう しょうへい) 氏
異業種交流会「VAV倶楽部」会長、株式会社銀座・トマト会長。
ケーキの会員制宅配を日本で最初に事業化、2万7,000人の会員を
組織したり、アイディア商品を次々にヒットさせ、
「アイディアマン」「洋菓子業界の革命児」と呼ばれた。
1980(昭和55)年には異業種交流会「VAV(バブ)倶楽部」を
設立。以来、45年にわたって出逢いとビジネスチャンスの機会を
創出してきた人脈づくりの達人でもある。
【著書】
 『お礼とサービス、やり過ぎるくらいがちょうどいい』(PHP)
 『人様に可愛がられる人になりなさい』(ダイヤモンド社)
 『人脈を作りたかったら、名刺を捨てなさい』(サンマーク出版)
 など

●異業種交流会 「VAV倶楽部」 http://www.vavclub.com/
●株式会社銀座・トマト https://ginza-tomato.co.jp/

「Bis・Navi」定期購読のご案内

「Bis・Navi(ビジネス・ナビゲーター)」は、書店では販売しておりません。確実に皆様にお読みいただくために毎月、弊社より直接郵送にて情報誌を送らせていただきます。この機会に是非、お読みくださいますようご案内申し上げます。
  <定期購読料>
     5,500円(消費税込み)
     ※1年分12冊をお送りします
     ※送料は上記料金に含みます

定期購読に関する詳細はこちらをお読みください。⇒「購読のご案内」

画像は2024年8月号です

コメント

タイトルとURLをコピーしました