■繁栄の法則 豪商三井の教え② 編集人 宇野 秀史
前回は、トップの心構えとして
「主人たるものは、一家の中のことは、上下大小の区別なく、これを知り尽くしておくように心がけよ」(吉田豊氏訳)
という三井高利の言葉を紹介しました。
今回は、組織と経営陣の和の大切さを説いた言葉です。
三井高利は、商いをさかんにし分家も栄えるなど三井家を大きな企業グループに育て上げます。組織が大きくなると、まとめることが非常に難しくなるものです。高利は遺訓『三井高利遺訓』の中で、子供や一族に対して次のような言葉を残しています。
「孤立した木は折れやすいが、林となった木はなかなか折れぬ。そのほうたちは、たがいに力を合わせ、一致和親して家運をさかんとするよう心がけよ」(吉田豊氏訳)。
これは、一族の和や団結心が乱れていては、内部では争いが起き、外に目を向ければ様々な外的危機に対して組織として耐えられなくなると語っているのでしょう。毛利元就の「三本の矢」と同じような考えです。
高利は一家の団結を呼びかけた上で、家(組織)の方向性を合せるために次の言葉を残しました。
「一族全体の中から一人の年長者を選んで、これを「老分」と名づけて一族の統括者とし、各分家は万事につき老分の命に従うものとする」(吉田豊氏訳)。
本家や分家など各家には統括するトップがいますが、全体を束ねる長を選んでその人に全体を指揮する権限を与えるという発想です。
それぞれがコミュニケーションを活発に図り、組織としての求心力を高める。その土台の上に明確なベクトルを示し全ての力を同じ方向に向ける。
いつの時代でも組織は人の集合体ですから、人の心が空気と力を作る源であるということをトップは忘れないようにしたいものです。
プロフィール
宇野 秀史(うの ひでふみ)
Bis・Navi(ビス・ナビ)編集人
昭和40年5月生まれ、熊本県出身。熊本県立第二高校、京都産業大学経営学部卒。出版社勤務を経て、独立。2017年7月、月刊ビジネス情報誌「Bis・Navi(ビス・ナビ)」を創刊。株式会社ビジネス・コミュニケーション代表取締役。
歴史の知恵、偉人や経営者が残した知恵を綴る。また、経営者の知恵を後継者に伝える、知恵の伝承にも取り組む。
著書:『トップの資質』(梓書院、共著)、『田中吉政』(梓書院、解説)、『田中の田中による田中のための本』
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