経営者の知恵を後継者に残すことで100年企業の基礎を築きませんか

トップは全てを把握すべし

繁栄の法則

■繁栄の法則 三井家の教え  編集人 宇野 秀史

豪商三井は慶長年間に三井高俊が武士から商品に転身したのが始まりと言われています。商家としての基礎を作り上げたのは三井高利であり、その商いを受け継いだ高平など子孫が商いを拡大し日本を代表する豪商へと発展しました。

高利は、当時の商いの常識を覆す考え方で新しい商法や価値を創造した人です。例えば、三井の商いであった当時の呉服商は、大名や旗本の屋敷に反物を持参してみてもらい、顧客が気に入ったら買ってもらう。それから仕立てて商品を届ける「訪問販売」が主流しでした。しかも、売上代金の回収は年に2回。これだけ手間をかけて販売したのに代金を回収するまでに数カ月もかかる。そのため、資金繰りに苦慮する店が多かった。しかも、台所事情の厳しい旗本や大名がなかなか代金を支払ってくれない、あるいは、代金が回収できないようなことも多く、資金繰りが苦しくなる店が多発しました。こうしたリスクの高い商いですから、利幅を大きくしなければ成り立ちません。当然、販売価格は高くなるわけです。

高利は、こうした旗本や大名相手の商売から大衆へとメインの販売先をシフトします。そして、顧客を訪問する販売から店頭売りに販売手法を変えました。一般大衆でも着物が帰るように反物売りではなく、切り売りも行いました。そして、掛け売りを止め現金での取引を始めます。現金取引ができれば、確実に代金が回収でき資金繰りが楽になりますし、顧客に良い品物を安く提供することができます。
高利の新しい商法は、高い支持を得て他の店でも導入され瞬く間に広がりました。

その高利が残した「三井高利遺訓」や高平(宗竺)の「宗竺居士家訓」から経営やビジネスの参考になりそうな言葉を幾つかご紹介します。
まず、リーダーについて。

「主人たるものは、一家の中のことは、上下大小の区別なく、これを知り尽くしておくように心がけよ」(吉田豊氏訳)

と、トップの心構えを説いています。

現場を見ようとしない経営者は、問題が起きても気づかないものですし、従業員の心を掴むこともできません。トップが現場を見なければ、現場の緊張感も緩みますから問題は起きやすくなり、組織としての統制もとれなくなるでしょう。
また、勉強しないトップも従業員から支持されなくなります。経済が複雑化し、様々な技術が急速に進歩する今日。例えばITについて理解しようともしないトップに対してスタッフが「この人についていこう」と思うでしょうか。

経営者やトップは自分が責任を負うことについて関心を持ち、経営に生かすために常に努力する姿勢を持っていたいものです。

<プロフィール>
宇野 秀史(うの ひでふみ)  
Bis・Navi(ビス・ナビ)編集人
昭和40年5月生まれ、熊本県出身。熊本県立第二高校、京都産業大学経営学部卒。出版社勤務を経て、独立。2017年7月、月刊ビジネス情報誌「Bis・Navi(ビス・ナビ)」を創刊。株式会社ビジネス・コミュニケーション代表取締役。
歴史の知恵、偉人や経営者が残した知恵を綴る。また、経営者の知恵を後継者に伝える、知恵の伝承にも取り組む。

著書:『トップの資質』(梓書院、共著)、『田中吉政』(梓書院、解説)、『田中の田中による田中のための本』

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