経営者と税理士と節税 ■井上税理士事務所 所長 井上 伸一
暦年贈与の非課税枠が110万円であることは、皆さんご存じだと思います。祖父や祖母からお孫さんへ毎年、非課税枠内の100万円程度を贈与している方も多いのではないでしょうか。
このところ相続税の申告が必要な方は増えていますが、相続税や贈与税の税務調査を受ける方は多くはありません。相続税の調査の際にしばしば問題になるのが名義預金です。相続税の調査の際には、贈与者(祖父や祖母)は亡くなっていますので、調査の対応は子や孫ということになりますが、通常は子が対応することになるでしょう。
贈与が成立するための最低条件は、①贈与者が資産を受贈者に渡す ②受贈者が贈与者から資産を受け取ったことを認識する となります。祖父が毎年100万円を孫名義の口座に振り込みをしても、孫がその口座の存在を知らなかったり、管理をしていない場合が贈与が成立しません。孫が小さい時には、口座の管理は不可能ですが、このような時期は親が未成年者の管理を行うので、親が管理をしていれば問題ありません。一定の時期に口座の管理を親から孫へ移すことが重要です。
名義預金とみなされ、相続財産に含められる場合の多くは次のような場合です。
●本人が口座の存在を知らない。本人が管理していない。
●預金残高が本人の所得と比べて不自然に多い。
●口座の銀行印が本人のものでなく、親や祖父母の印鑑となっている。
●口座開設をした金融機関が本人の住所ではなく、贈与者の近くの支店になっている。
●預金が預けられたままで口座の引き落としがない。
生前贈与は、現金を動かすことが最も簡単な方法かもしれませんが、もっと有効・有用な方法もあります。また、贈与を問題なく成立させるために少し税金を支払って贈与税の申告を行うのも選択の一つになります。
経営者と税理士と節税 Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.159(2024年9月号)
プロフィール
井上 伸一(いのうえ しんいち) 【税理士】
井上税理士事務所 所長
昭和46年、福岡県生まれ。長崎青雲高等学校、立命館大学法学部卒業。
平成11年、税理士登録。平成23年、井上税理士事務所開業。
中小企業の経営指導のほか、企業経営者・医師等に向けて各種セミナーを行う。
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