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夫婦の共有財産

経営者と税理士と節税

経営者と税理士と節税   ■井上税理士事務所 所長  井上 伸一

先日から一時払終身保険のお話をしていますが、最近いただいた契約の中であった事例を参考に「夫婦の共有財産」について考えてみたいとお思います。既契約の終身保険を解約し、ドル建ての一時払終身保険に加入したいとのお話をいただきました。ご夫婦共にドクターなのですが、別々のクリニックを開業されています。どちらともそれなりの収入があるということです。

既契約の終身保険は、
契約者:夫
被保険者:夫
受取人:妻 
なのですが、何故か保険料の支払い口座は妻のものとなっていました。その契約を解約して、解約金のほぼ全額を新規の一時払の保険料の支払に充ててしまいました。
新規の一時払いの契約形態は、
契約者:夫
被保険者:夫
受取人:妻
という内容です。

どういう状況になったかと簡単に言うと、新たに妻の財産で夫が自分の保険料を支払ったということです。このままでは、多額の贈与が発生したことになります。事前に今回のお金の流れを聞いていれば、もう少し変わった結果になったのかもしれませんが、全ての契約が終わった後に、今回のお金の流れを聞いてしまうことになりました。ご主人から「夫婦共有の財産」というような考え方で、「このまま何とかならないものか」とご相談をいただきましたが、「無理です」とお伝えしました。

民法には「夫婦共有財産」の考え方があり、通常の生活の支出や離婚の際に検討事項に上がりますが、税法には「夫婦共有財産」の概念はありません。実質的に誰に帰属するかで判断をします。今回の場合は、妻の口座から支払われた保険契約金を解約時に妻の口座に戻して終わっておけば問題なしでした。今回は新規契約の保険料を一時払いにて支払ってしまったので、夫が妻から借りたことにして対応することにしました。
夫婦間の金銭の遣り取りは、お気をつけください。

経営者と税理士と節税  Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.158(2024年8月号)

プロフィール

井上 伸一(いのうえ しんいち) 【税理士】
井上税理士事務所 所長
昭和46年、福岡県生まれ。長崎青雲高等学校、立命館大学法学部卒業。
平成11年、税理士登録。平成23年、井上税理士事務所開業。
中小企業の経営指導のほか、企業経営者・医師等に向けて各種セミナーを行う。

URL http://www.itax.jp/

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画像は2024年8月号です

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