Trend&News ■株式会社スカイスターツアーズ 代表取締役 髙井英子さん
2008年、「マーシャル諸島共和国」への添乗から始まり、日本人にとってあまり馴染みのない国や地域への訪問体験をつづった書籍「珍国の女王」を2016年に出版。現在に至るまで121ヵ国に上る〝珍国〟への添乗経験を強みに、単なる旅行業者としてだけでなく、国内外での企画や多彩な分野での活動をコーディネートしている株式会社スカイスターツアーズ社長の髙井英子さん。自らを「飛行機大好き。お出かけ好きな人見知り」という彼女が、次に取り組んでいくもの、今後の目標について話を聞いた。2008年、「マーシャル諸島共和国」への添乗から始まり、日本人にとってあまり馴染みのない国や地域への訪問体験をつづった書籍「珍国の女王」を2016年に出版。現在に至るまで121ヵ国に上る〝珍国〟への添乗経験を強みに、単なる旅行業者としてだけでなく、国内外での企画や多彩な分野での活動をコーディネートしている株式会社スカイスターツアーズ社長の髙井英子さん。自らを「飛行機大好き。お出かけ好きな人見知り」という彼女が、次に取り組んでいくもの、今後の目標について話を聞いた。
著書の「珍国の女王」には、私たちにはあまり馴染みのない39もの国や地域について書かれています。単なる旅行ガイド本ではなく、さまざまな国に住む人や景観、自然、歴史との出会いを通じて、筆者が自分の生き方や立ち位置のようなものを見つけ出していく、冒険成長物語のように読ませていただきました。
髙井
「珍国の女王」は西日本新聞社のウェブサイト〝ファンファン福岡〟に連載していたコラムを一冊にまとめないか、とお声がけをいただき、出版したものです。コラム連載を始めるようになったのは、地元の福岡市南区大橋エリアで開催していた乳がんイベントの取材に来ていた新聞社の方に出会ったからなんですよ。
はじまりはマーシャル諸島共和国から
髙井さんが「珍国の女王」と称されるようになったきっかけは、太平洋上のマーシャル諸島共和国への添乗からだそうですが、それまで旅行の添乗はしていなかったのですか?
髙井
数年の社会人経験の後、叔母が経営する旅行会社に21歳の時(1994年)に入社して旅行業界へ入りました。その後、2001年の同時多発テロの影響などもあって、その会社は廃業してしまいましたが、体調を崩した叔母に代わって、私の母が個人として事業を継承することになりました。家族全員で経営を引き継いで大変な中、私を〝珍国〟への道に導いてくれた恩人…本の中では「珍国の陛下」といっていますが、その社長を紹介してくださる方がいたんです。
はじめは、社長が珍国への添乗に行っている間、メールチェックや事務などの簡単な業務を担当していました。ところが突然、社長がどうしてもマーシャル諸島への添乗に行けない、という緊急事態が発生したんです。そこで「あなた代わりに行ってきて」と…。
それまで、15~6ヵ国くらいの添乗経験はありましたが、いわゆる「珍国」と呼ばれるような、日本人の旅行者があまり選ばない国への添乗は、その時が初めてでした。とても不安だったのですが、その旅が「帰りたくない」と思うくらい、楽しくて楽しくて…。以来、15年以上、珍国への旅が続いていて、訪問国、地域は121ヵ所になります。
2016年には独立して株式会社スカイスターツアーズを設立しました。叔母からはじまって、母、私へと家族全員で旅行業に携わってきたので、今後も発展継承していきたいと思っています。
契機となる出会いがあっての〝女王〟の誕生だったんですね。珍国ツアーに参加される方は、どういう方が多いのですか。
髙井
70代以上のシニア世代がほとんどで、皆さん人生を楽しんでいる方々、という印象です。珍国添乗を始めたばかりの頃からのお客様には、「あの頃はひどかった」と言われるほどで、正直、失敗も多く、英語力だけでなく実力不足でした。最近、ようやく「頼りがいが出てきたね」と言われるようになりました。
トラブルやアクシデントを超える「ここに来て良かった」を提供
珍国添乗の場合、過酷な天候や文化の違いなど、苦労する面も多々あると思いますが、15年以上続けることができたモチベーションや珍国の魅力というのは、どういったところにありますか?
髙井
やっぱり海外に行くことが好きで、飛行機に乗るのも大好きなんです。そして、その国に降り立った時に全身で感じる、風や匂いや雰囲気など、言葉では言い表せない体感が好きですね。それから回数を重ねるにつれ、これまで出会った方や顔なじみ、知り合いが待っててくれている、という楽しみも増えてきました。
珍国ツアーは飛行機の乗換えも多く、トラブルやアクシデントが起きる中、お客様を守るためには、さまざまな場面で交渉が必要となります。今でも変わらず人見知りで、交渉事は苦手ですし、騙されたり、賄賂を要求されたりと、人に悩まされることも多いのですが、お客様だけでなく、出会ってきた〝人〟に救われてきたので、やっぱりこの仕事は辞められない、と思っちゃいますね。世界に200以上ある国や地域の中から「ここに来てよかった」と心から思っていただけるツアーを、今後も提供していきたいと思っています。
人との出会いによって、その時その時、助けられてきた経験があるからこそ、旅行業だけでなく、それを還元、循環していくイベント開催や講演活動にも取り組んでいるんですね。
髙井
2度目の珍国添乗からは、アフリカへのツアーがほとんどでした。ある意味、アフリカに育ててもらったという感覚もあります。恩返しではないのですが、せっかくの縁をつなぐ意味で、私が幹事の一人でもある大橋エリアの地域活性を目的とした一般社団法人「街×人(マチビト)」が主催して、2019年から年に一度、大橋駅前西口広場を会場として「アフリカ広場」というイベントを開催しています。今年も四月に開催しました。
アフリカになかなか行けないんだったら、アフリカに来てもらおう、ということで、アフリカからの留学生を中心に、様々なエリアのアフリカの人達との交流を図ってもらい、地域住民の相互理解を深めてほしいという思いから、食べ物、音楽、ダンス、ファッションを楽しめる総合イベントになっています。
ルワンダの布〝キテンゲ〟という生地で、オリジナルドレスを二着作り、現地のシングルマザーと一着ずつ分け合う「Dress for Two」というファッションプロジェクトも、「アフリカ広場」などのイベントを通じて、日本国内にもっと広めていければと思っています。
この企画は アフリカのルワンダでスラム街支援やこども食堂の運営などにも取組んでいる、「KISEKI」の山田美緒さんに協働させてもらっているものです。美緒さんとの出会いによって、子どもたちをアフリカに連れていく「教えないスタディーツアー」を受注型で企画することになりました。
広い〝世界〟を体感して成長していく子どもたち
子どもたち向けの珍国ツアーなんですね。
髙井
2022年から始めた、アフリカ・ルワンダへの「教えないスタディーツアー」は、インターン制度で日本人大学生を受け入れている山田さんの「KISEKI」をベースに、大学生たちとボランティア活動に参加したり、農村へのホームステイなど、本当に様々な体験ができる中身の濃いツアーだと喜ばれています。今年も八月に催行します。
子どもたちは大人と違って、先入観がなく差別意識もないので、言葉がわからなくても、自由な視点や発想でシンプルに目標をクリアしていこうとするんです。インターンで参加している、年上の大学生たちの方が躊躇してしまうことの方が多いくらいで、ボランティア企画もキッズの方が率先して取り組んでいく場面も多いんですよ。
参加者の中には、普段、フリースクールに通っている子もいますが、環境が変わったり、たくさんの体験を通じて、自分のやりたいことや目的を見つけると、どんどん成長していくんですよね。もっとたくさんの子どもたちにそんな貴重な経験をしてもらいたいと思います。
他にもコロナ禍が明けて、ニーズが増えてきたのですが、世界から子どもたちが集まるバリ島の「グリーンスクール」のサマーキャンプへの参加や長崎県五島での英語サマーキャンプなど、英語習得だけでなく、様々な体験を通じて〝世界〟を感じられるツアーは参加する子どもたちだけでなく、親御さん方からも好評をいただいています。
インドでの日本酒事業展開にも関わる
最近は、福岡の地酒・繁桝(高橋商店)のインドでの事業にも関わっているそうですが、どのような経緯なんですか?
髙井
きっかけは、去年(2023年)8月、インドの緑地化に私財を投じて献身した〝グリーン・ファーザー〟と呼ばれる、福岡市出身の杉山龍丸氏についてのお話会に参加した際、インドの方と出会って、「福岡県とインドのデリーは姉妹都市なのに、デリーには福岡産のものが無いんだよ」という話を聞いたことからです。インドではお酒をよく飲むし、バーやレストランなどの飲食店ではワイン、ウイスキー、ビールなども種類が豊富だが、まだ日本酒はほとんど流通していないとのことでした。
それより前のコロナ禍の時期に、とある方から日本酒・繁桝の蔵元株式会社高橋商店の中川拓也社長を紹介されていて、この話をしたところ、かねてから海外販路を模索中だった中川社長が「詳しく話を聞きたい」ということになり、九月にそのインドの方を中川社長にお引き合わせして、11月にインドに視察に行きました。
その際、日本食レストランのオーナーから聞いた「これまで日本酒を広めようと、参入してきた会社はあったが、みんな勝つまでやらない。すぐあきらめるから」との言葉に、チャレンジする意欲と勇気をいただきました。
また、その時たまたま開催されていた、デリーの福岡県人会の懇親会に参加させてもらったんですが、皆さん「インドで福岡の繁桝が飲めるようになるなら嬉しい」と大変好評で、それも後押しになりました。
まずはインドで最初の日本酒法人に、と二〇二四年二月にシゲマス・インディア(SHIGEMASU India)を首都ニューデリーに設立しました。その月に開催された、日本大使館でのイベントやレセプションでも日本酒・繁桝を紹介することが出来て、日本人だけでなくさまざまな国の方からも大人気で、好評をいただきました。
三月の法人設立パーティもおかげさまで盛況で、各方面のライセンス取得や認可が下り次第、飲食店やホテルなどで提供が始まります。日本酒だけでなく、特産物や伝統工芸品なども取り扱う予定です。
とてもスピーディな展開に驚きますが、ここでも出会いに導かれたのですね。
髙井
中川社長の考えは、日本酒そのものをインドに広めるだけでなく、日本酒という文化、つまり「麹を使った伝統的な酒造りの文化」を根付かせたいということなので、ゆくゆくはインドの米、水を使い、インドの人の手によって日本酒を醸造する会社にしていくという目標がありますので、サポートしていきたいと考えています。
しばらくはインドにかかりきりになりそうですね。
髙井
インドとアフリカと珍国とを行き来することになりそうです。ただ、インドとアフリカはとても近いんですよ。日本からよりも行きやすくなると思います。
それから、逆に福岡県や九州の観光プロモーションに力を入れていきたいので、ツアーやスポットなどを提案してほしいという話もいただいていて、今後は子どもたちのためのツアーと、インドと、講演活動などに力を入れていきたいと思っています。
会社概要
名 称 株式会社スカイスターツアーズ
住 所 福岡市南区向新町1丁目5-11
代 表 髙井 英子
設 立 平成28年1月4日
事業内容 国内外の旅行のコンサルティング、国内外の旅行プランニング
新聞、書籍に関する執筆活動など
URL https://skystartours.com/
Trend&News Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.157(2024年7月号)
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