経営者の知恵を後継者に残すことで100年企業の基礎を築きませんか

資金や認知度がなくても話題づくりはできます

承前啓後

承前啓後 アイディア編(1)  異業種交流会「VAV倶楽部」会長 近藤昌平さん

当たり前の事だが、商品を買ってもらうためには、まず、存在や特徴を知ってもらうことが大前提だ。その上で、関心を引く工夫が欠かせない。
近藤さんは、愛知県での洋菓子の製造販売で成功すると、新しい市場を求めて単身、東京に進出する。いざ東京に出てみると、自社のブランド「ボンボヌール」を知る人はほとんどいない。相場が高くで店舗や工場は持てない。洋菓子店としては、武器も持たずに日本一の激戦区で戦いを挑んだわけだ。
愛知県では知名度を上げたが、東京では人脈も無いに等しい。そのような状況にありながら、1年も経たないうちに持ち前のアイディアで、認知度ゼロから東京でも話題の人となった。近藤さんは、どうやって不利な状況を打開したのか。

店舗をもたないケーキ屋
東京に出た時、お客様はいませんから知名度はほぼゼロ。本社からは、「社長が売るだろう」と、クッキーなどの焼き菓子を大量に送ってくる。部屋にはお菓子の箱が積み上がるわけです。
僅かばかりの知り合いを訪ねては、頼まれもしないのに箱ごと置いてくる。後に、そうして差し上げた方々から注文をいただくようになりましたが、最初は、買ってもらいたいというよりも、処分できずにたまったお菓子をさばきたいという思いが大きかったですね。

東京は日本一の激戦区です。にもかかわらず、商品を並べる店は持てません。店がないから生のケーキは販売できない。焼き菓子専門、それも無店舗での営業です。のんびりと構え「いつかなるようになる。自分は運が良いから大丈夫」と信じていました。

「黒いケーキ屋さん」で話題をさらう
東京に出た1981(昭和56)年当時は、ケーキなどの洋菓子は女性や子供が食べるものというイメージが強く、商品や包装紙、店の中も明るい色調のものが好まれました。東京では、「誰もやらない売り方をしよう」と考えていましたから、業界の常識にはなかった黒をイメージカラーにしようと考えました。菓子業界では黒色は、敬遠される色です。しかし、調べてみると、古から黒は高貴な色とされていたことがわかりました。しかも、黒は魔よけの色でもあります。

私は、とことん黒にこだわることにしました。スーツや靴、靴下、ネクタイ、ハンカチまで黒。カバンも黒。名刺は黒の台紙に金文字で印刷したもの。商品の包装紙も黒。包装する紐は金色です。「黒いケーキ屋さん」の誕生です。

最初のうちは、驚かれたり怪訝な顔をされました。しかし、黒は高貴な色であり、魔よけの色でもあることを説明すると、次第に受け入れられるようになりました。そうして、徐々に営業先が増えると、今度は噂が広がり「黒いケーキ屋さん」が一人歩きを始めます。初めて営業に伺った先でも、「これが噂の黒い名刺ですか」と、黒を敬遠していた業界の方々が、面白がって歓迎してくださるようになりました。
さらに、「黒ずくめの面白いケーキ屋さんがいる」という噂にマスコミが興味を持ち、取材を受けるようになります。日経新聞をはじめ、大半の新聞で取り上げていただき、雑誌やテレビなどのメディアでも「ユニークな商法」として話題を集めるようになりました。広告宣伝費はいっさいかけていませんが、メディアでの露出を広告費に換算すると莫大な金額になったでしょうね。東京に出た最初の月の売上はわずか12万円。それが、半年後には月商1000万円を超えました。

資金や知名度がないから何もできないのではなく、知恵を絞れば色んなことができるわけです。大切なのは、人がやらないことを考え、それを徹底することだと思います。
アイディアは無限ですね。ただ、お菓子は当然のこと、美味しくないとダメですよ。

※「承前啓後」:受け継いだものや知恵を大切にし、未来を切り拓くことを意味する

承前啓後 Bis・Navi(ビス・ナビ)Vol.157(2024年7月号)

プロフィール

近藤 昌平(こんどう しょうへい) 氏
異業種交流会「VAV倶楽部」会長、株式会社銀座・トマト会長。
ケーキの会員制宅配を日本で最初に事業化、2万7,000人の会員を
組織したり、アイディア商品を次々にヒットさせ、
「アイディアマン」「洋菓子業界の革命児」と呼ばれた。
1980(昭和55)年には異業種交流会「VAV(バブ)倶楽部」を
設立。以来、45年にわたって出逢いとビジネスチャンスの機会を
創出してきた人脈づくりの達人でもある。
【著書】
 『お礼とサービス、やり過ぎるくらいがちょうどいい』(PHP)
 『人様に可愛がられる人になりなさい』(ダイヤモンド社)
 『人脈を作りたかったら、名刺を捨てなさい』(サンマーク出版)
 など

異業種交流会 「VAV倶楽部」 http://www.vavclub.com/
株式会社銀座・トマト https://ginza-tomato.co.jp/

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画像は2024年8月号です

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