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八幡神社(長崎県雲仙市)

神社訪ねある記

神社訪ねある記  ■箱嶌 八郎

温泉(ゆ)の山は 海になだれて 麦の秋

5月末、今回は福岡を離れ長崎県雲仙市にある八幅神社をお訪ねすることになった。以前、風水設計のご相談を受けお邪魔したとき志賀前宮司にキリシタンと神社の興味あるお話を聞かせてもらっていた。諫早インターで降り、橘湾を右手に見て雲仙岳の麓を宇野さんご夫婦と車で南下した。長崎県は諫早から3本の半島に分かれている。西彼杵半島、長崎半島、島原半島である。地図で見ると東シナ海を掴みかからんとする龍の鋭い3本爪のようである。

活火山の雲仙岳は島原半島のヘソである。30年前、普賢岳が噴火し、多数の死者を出した火砕流の怖さが思い出される。諫早から千々石、小浜を経て口之津に至るキリシタンロードの途中、南串山町に八幡神社はあった。すこし小高い丘に登ると古色のついた石の鳥居が建っていた。高さ10メートルはあろうか、一抱えはある石柱に延宝6年(1678)戊午、松平主殿頭(とのものかみ)領と刻んであった。今から346年前、島原の乱40年後の建立である。

歴史の証人のような鳥居を潜って30段ほどの急な石段を登ると樹齢何百年という楠の大樹が頭上に被さって見えた。2の鳥居をくぐると、その先に八幡神社のご本殿があった。何本もの楠の巨木に護られ、八幡神社と扁額の架かった簡素な神殿である。今日お訪ねする宮司様ご兄弟と母上様が笑顔で並んでおられた。「楠の木霊(こだま)に気圧される気がしますね」とご挨拶をかわした。ご本殿の脇に昭和63年の改築記念碑が建っていた。当時で350年経ているとあるから旧社殿は寛永17年(1638)に建てられたことになる。寛永14年の12月に勃発した島原・天草キリシタン一揆が翌年2月に鎮圧されたので、このお社はその2年後に建てられたのだろう。それ以前の社殿はキリシタン大名の有馬氏の手で焼き討ちに遭ったのではないだろうか。この一円、雲仙岳の温泉神社の総本山も含めイエズス会の示唆を受け、神社仏閣は壊滅的な破壊を受けている。「それはひどいもんじゃったと伝えられている」、先代の宮司様にそうお聞きしたのを覚えている。

本殿脇に柴犬(しばけん)ほどの狛犬(こまいぬ)さんが鎮座している。再建以来386年ずっとお社を譲ってござるのだ。初めて神殿に上がった時この狛犬様に「ウウ」とうなられた。狛犬さんには不思議な霊力があり、頼めば家出人を連れ帰ってくれる。そっと一礼して本殿に上がる。

「令和四年の末に祖父から14代宮司を受け継ぎました」とご紹介を受けた。仲哀天皇、神功皇后、応神天皇、武内宿禰そして和気清麻呂をお祀りされ、3000人もの氏子さんたちを護る壮年の志賀大輔宮司、伊勢の皇學館で神主修業をなさったそうである。お祖父様に似て骨格の大きなスポーツマンタイプ。タレントに例えると若い頃の松平健、弟さんは細身の大泉洋のように思えた。「宮司を継承した日から1週間、お宮さんのカラスが大楠の梢の枝葉を折って降らせ続ける不思議なことがありました」と、母上が話された。「神様方がカラスを使って祝福されたんでしょうね」私はそう感じた。「志賀海神社の阿曇氏とつながりはありますか」とお聞きしたら、志賀氏は安曇氏と関係が深いそうであった。福岡の志賀海神社にはよく参りますよと母上が言われた。

前宮司は、終戦後、氏子衆の漁師が海に出て留守の間、子供さんたちをこの神社にあずかっているうちに種々の福祉事業を頼まれるようになり、社会福祉法人八幡会を創設。4年ほど前、皇居で天皇陛下から瑞宝双光章を授けられた社会福祉家である。お嬢さんである母上も総合施設長として活躍。凛として、はっきりものを言う女性である。湾の入り江にアジ、イサキ、タイの養殖場を持ち、養殖法の職業指導をしておられる。弥生初期、稲の栽培や鉄の加工法を倭人に伝授した中国からの渡来民、阿曇族と同じようなことをされているのも血のなせる業かもしれない。

「静養中の前宮司にお会いしたかったです。お元気になられますようお伝えください」社前の狛犬さんの背中を怖々(こわごわ)撫でて神社を後にした。雲仙缶を右手に見て諫早に戻る。小浜の温泉街では側溝から温泉蒸気が音を立てて噴き上がっていた。頼山陽が謳った「雲か山か呉か越か」の島影はあいにく曇天のため見ることができず、残念だった。

二十九代 木村庄之助氏の書

八幡神社
創建  不明
住所  長崎県雲仙市南串山町丙9805
URL  https://www.hachimankai.or.jp/shrine.html

神社訪ねある記  Bis・Navi(ビス・ナビ)Vol.157(2024年7月号)

著者:箱嶌八郎(成風) 氏
有限会社タオコーポレーション・風水家相タオ設計工房主宰。
福岡市生まれ。当仁小、中学、修猷館高、早大卒。
西日本新聞TNC文化サークル・風水教室講師・もの書き屋・エッセイスト。
・第23回森鴎外記念北九州市自分史 文学賞
・第50回福岡市文学賞
・第3回子母沢寛文学賞「愛猿記賞」 等々大賞受賞。
著作:「されど風水」あり。

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画像は2024年8月号です

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