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「既に起こった未来」を確認する

弁理士よもやま話

弁理士よもやま話  ■加藤合同国際特許事務所 会長  加藤 久

新型コロナは瞬く間に世界を変えてしまいました。この原稿を書いている5月14日には福岡県の緊急事態宣言も解除されました。しかしながら、「コロナが一段落したとしてもすべてが元のように戻ることはない」というのが、大方の意見のようです。
また、「世界保健機関(WHO)で緊急事態対応を統括するマイケル・ライアン氏は13日、新型コロナウイルスがヒト免疫不全ウイルス(HIV)と同様、消滅しない可能性があるという見方を示した。」との不気味なニュースもあり、今後も予断を許さない状況が続くものと思われます。

ドラッガーは、「変化の激しい時代においては、継続しているものとそうでないものを見分けることが重要であり、そこで観るべきものはトレンドではなくシフトである」、そして、「トレンドとは、過去の活動によってもたらされる量的な変化であり、一方シフトとは、質的に新しい、後戻りしない重大な変化のことである」と言っています。
さらに、質的な変化には過去がなく、したがって、いくら過去のデータを分析しても質の変化を掴むことはできない、質の変化、すなわちシフトを掴むことができるのは人間の持っている「知覚」であり、その「知覚」で「すでに起きた未来を観る」ことの重要性を説いています。
そして、「すでに起こった未来」は常に観えるものではなく、今回のコロナ禍のような重大な変化の時に垣間見えるもので、コロナの災禍が終息した後、平時になるとはまた観えにくくなるとも言っています。

したがって、今私たちが行うべきことは、「今だからこそ見える、すでに起こった未来」を見逃すことなく、その変化の意味を考えることでありましょう。
私自身の経験で、一番のシフトは「テレワーク」の実践です。それを実現したZoomをはじめ様々なツールには目を見張るものはあります。一昔前に数千万円をかけてやっていたようなことが、ほとんどコストゼロで実現できる世の中には驚きです。
頭の中では知っていても、なかなか仕事で実践するに至らなかったのですが、今回実際に使ってみて十分に使用できることが分かり、今後はこのようなルールのさらなる進歩によってビジネスのやり方が大きく変わると思われます。

テレワークが進めば通勤がなくなるだけではなく、広範な変化が予測されます。たとえば、多くの経営者が、家賃の高い場所に広いオフィスが必要ないことに気づきましたので、これは今後のオフィス需要に大きな影響を及ぼすのは明らかです。そしてそれは不動産の価値にも影響します。さらに、多くの出張が減るのではないでしょうか。
半年前まで、月に2~3回は東京にいっていたのですが、今回の経験で、そのほとんどはZOOMで事足りることが分かりました。また、空港での混雑状況を見るにつけ、今後は交通産業、観光産業は絶対伸びていくと確信していたのですが、それがものの見事に打ち砕かれました。

要は、当たり前のことが当たり前ではない世の中になりつつあるようです。むしろ、「のど元過ぎれば」で、コロナも過去のものとなり、多くのことが元に戻ってしまうことの方が私には心配です。
であれば、今私たちの目の前にある現実、それも当たり前で今後もシフトしないと思われるものを、イメージの世界で一つずつぶっ壊してみるのも面白いかもしれません。絶対変わらない安泰だと思われているものが壊れると、どのような世界が出現するかsimulationしてみると、ひょっとしたら「まだ起こらない未来」が垣間見え、今後のビジネスの大きなヒントが得られるかもしれません。

弁理士よもやま話  Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.108(2020年6月号)

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プロフィール

加藤 久(かとう ひさし) 【弁理士】
加藤合同国際特許事務所  会長

1959年12月生まれ、福岡市出身、中央大学法学部卒。98年12月藤本公認会計士事務所を設立、所長1954年福岡県生まれ。佐賀大学理工学部卒業後、福岡市役所に勤務。87年弁理士試験合格、94年加藤特許事務所(現:加藤合同国際特許事務所)設立。2014年「知財功労賞 特許庁長官表彰」受賞、20年会長就任。
得意な技術分野:電気、機械、情報通信、ソフトウェア、農業資材、土木建設、無機材料、日用品など。

加藤合同国際特許事務所|福岡で特許・実用新案・商標・意匠の出願は
福岡(九州)の特許事務所、加藤合同国際特許事務所では特許出願及び実用新案登録出願の代理業務や意匠登録出願、商標登録出願の代理業務を致しております。お支払いにはクレジットカードもご利用頂けます。

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