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不動産投資と節税

経営者と税理士と節税

経営者と税理士と節税   ■井上税理士事務所 所長  井上 伸一

「個人でマンションを1室、数室または1棟ごと購入して、節税しよう!」というような話を時々耳にします。果たして、不動産投資で節税は可能なのでしょうか。
縁あって、私は不動産投資を行っている方の確定申告を毎年、80名くらい行っており、その方の多くが還付申告となりますので、確定申告の期限が過ぎてから申告を行っています。今くらいの時期から申告を進めるってことですね。

給与所得等と損益通算をして税金が少なくなるため(還付)には、不動産に関する所得が赤字でなければなりません。つまり、収入より経費が多くならないといけないということになります。ここでいう経費とは、通常は、固定資産税、減価償却費、借入れの利息等になります。取得時には、登記費用や登録免許税、不動産取得税などもありますね。不動産を購入して賃貸することにより、常に赤字を出すということは、得る金銭より出ていく金銭のほうが多いということになります。これでは、所得税は少なくなるかもしれませんが、赤字を垂れ流すだけで「節税」とはいいません。不動産を手にしてから売却するまでに得た資金が多くないと不動産を購入した意味はありません。

不動産投資で注意すべき点は、収益性と減価償却費となります。また、借入れをして不動産を購入する場合には、借入利率も重要です。
収益性が高い物件は、手放す際にも高く売却できる可能性があります。売却時の税率は約20%になりますので、高い税率の方ほど、お得感はあります。最も良い物件は、賃貸時に多額の減価償却費を計上でき、高値で売却できる物となります。

次に減価償却費です。不動産所得が赤字になる大きな原因は、この減価償却費です。多くの減価償却費を計上することが可能な物件ほど、お得な物件となります。
高い利息で不動産を購入すると、そのぶんだけ調達資金が増えることになり、収益性を圧迫することになります。よく広告等で目にする投資物件の多くは、どちらかというと高い利息の借入がひも付きとなっており、不動産所得は赤字になりますが、長い目で見ると高利率により収益性がかなり低くなり、お勧めできるものではありません。

購入から売却までに、税金や金銭で手残りを増やそうと考えると、不動産投資は簡単にできるものではありません。不動産所得で赤字を出して、所得を圧縮するのは簡単ですが、ただの無駄遣いになってしまします。

経営者と税理士と節税  Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.155(2024年5月号)

プロフィール

井上 伸一(いのうえ しんいち) 【税理士】
井上税理士事務所 所長
昭和46年、福岡県生まれ。長崎青雲高等学校、立命館大学法学部卒業。
平成11年、税理士登録。平成23年、井上税理士事務所開業。
中小企業の経営指導のほか、企業経営者・医師等に向けて各種セミナーを行う。

URL http://www.itax.jp/

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