経営者と税理士と節税 ■井上税理士事務所 所長 井上 伸一
今年の所得税確定申告は、令和5年10月1日からインボイス制度(適格請求書等保存方式)が始まってからの初めての確定申告でした。
これまで毎年、消費税の確定申告をされている方は、これまでと同様の手続きとなりましたが、消費税申告書の記載事項や決算書の記載事項に変更がありました。決算書には取引先インボイス番号を記載する欄が設けられたり、申告書にはインボイス番号が不明な取引先との取引額を記載が必要となりました。インボイス番号を取得していない相手への支払いに係る消費税は、これまでの8割しか控除の対象となりませんし、経過措置終了後には全く控除が出来なくなります。そのため、インボイス番号を取得しないままでいると、取引先として選んでもらえなくなる可能性があります。適格事業者以外との取引では、仕入税額控除が出来ないからです。
また、これまで課税売上高が1,000万円を超えていなかったために消費税の申告が必要なかった事業者もインボイス番号を取得により、消費税の申告が必要になった方もいます。令和5年10月に登録をした事業者は10月から12月までの3ヶ月分のみの納付税額を計算して申告をしました。消費税の仕組みや計算の仕方を理解していただくのが大変でした。数年後には全ての作業が当たり前になるのでしょうが。
収入(売上)が少額であっても先方からインボイス番号の取得を求められた結果、10月から12月の収入が30,000円程度の方も消費税の申告を行いました。わずか、500円の納税額となりました。申告書を作成・提出する税理士の立場からすると本当に面倒な制度ですし、手間が増えただけで収入が増えるわけではありません。
前にも述べましたが、世の中には、それなりの規模で事業をされていても、無申告の方がいます。インボイス制度が始まるということで、今まで無申告であった方が、今回から申告するようになった方もいます。色んな問題が指摘されいる制度ですが、適正な申告の一助になったことは確かなようです。
経営者と税理士と節税 Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.154(2024年4月号)
プロフィール
井上 伸一(いのうえ しんいち) 【税理士】
井上税理士事務所 所長
昭和46年、福岡県生まれ。長崎青雲高等学校、立命館大学法学部卒業。
平成11年、税理士登録。平成23年、井上税理士事務所開業。
中小企業の経営指導のほか、企業経営者・医師等に向けて各種セミナーを行う。
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