談話室 五三の桐 ■江上慎也司法書士事務所 所長 江上 慎也
前回まで「法定後見制度」についてお話してきましたが、今回からはもう一つの後見制度である「任意後見制度」についてお話をしていきます。
「任意後見制度」とは、本人の判断能力があるうちに、本人の判断能力が不十分になった場合に備えて、本人が選んだ任意後見人となる人との間で自身の生活、療養看護や財産管理などについての事務を任せる契約(「任意後見契約」といいます)をあらかじめ結んでおき、実際に本人の判断能力が不十分になった場合には、任意後見人がこれらの事務を本人を代理して行う制度です。
「任意後見制度」では誰を任意後見人とするかは本人が自由に決められます。一方、「法定後見制度」では候補者を立てることはできますが、最終的には家庭裁判所の判断によるので必ずしも候補者が選任されるとは限らず、この点が大きく異なるポイントとなります。
また任意後見人の代理権は、任意後見契約に定められた行為について付与されます。一方法定後見制度では、後見人の場合は財産に関するすべての法律行為、補助人及び保佐人の場合は家庭裁判所が審判した特定の行為についてそれぞれ代理行為が付与されます。
つまり、「任意後見制度」は誰に事務を行ってもらうのか、どの範囲の事務について任せるのかという点について、本人の意向が最大限尊重される制度であるといえます。
「談話室 五三の桐」 Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.152(2024年3月号)
プロフィール
司法書士江上慎也事務所 所長 江上 慎也(えがみ しんや)
昭和50年、福岡県生まれ。福岡県立明善高等学校、九州大学法学部卒業
平成10年、司法書士試験合格。約20年間福岡市内の司法書士事務所に勤務。
平成30年、司法書士江上慎也事務所開業。
趣味は登山・キャンプ、楽しくお酒を飲むこと、映画鑑賞や博物館めぐりです。
小学校の親父の会等の地域のPTA活動にも参加しています。
コメント