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いらない土地の所有権を国に移すことができる?

談話室 五三の桐

談話室 五三の桐  ■江上慎也司法書士事務所 所長 江上 慎也

財産的価値が低く固定資産税などのコストだけがかかるいわゆる「負動産」を相続して困っている、というお話しを伺うことがあります。

従来までは不要な土地の所有権を放棄するといった制度がなく、やむを得ず相続人のうちの一人が所有者とならざるを得ませんでした。そこで相続した不要な土地の所有権を国に移すことができるという制度が新たに創設されました。これを「相続土地国庫帰属制度」といい、令和5年4月27日から運用が開始されます。
一見とても便利な制度のように思えますが、実際に不要な土地の所有権を国へ移転させるにはハードルが高いと言わざるを得ません。

まず、この制度を利用できるのは、相続や遺贈によって土地の全部又は一部を取得した相続人に限られます。
また、どんな土地でも対象になるのではありません。紙面の都合上詳細は割愛しますが、例えば建物が存在している土地、担保権が設定されている土地、境界が明らかでない土地、崖を含む土地で管理が大変なもの、土地の上に車や樹木など管理の邪魔になるものがある土地などは対象外です。

これらの条件をクリアしても、審査のための手数料が必要であったり、国への所有権移転が承認された場合、現所有者の側で負担金を納める必要があります。この負担金の額ですが管理に要する10年分の費用を納付する必要があり、具体的には原野などで20万円、200㎡程度の市街地にある宅地であれば80万円程度という目安が示されています。

以上の理由から、簡単に利用できる制度とは言いにくいのではないかと考えます。

「談話室 五三の桐」 Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.132(2022年6月号)

プロフィール

司法書士江上慎也事務所 所長 江上 慎也(えがみ しんや) 

昭和50年、福岡県生まれ。福岡県立明善高等学校、九州大学法学部卒業
平成10年、司法書士試験合格。約20年間福岡市内の司法書士事務所に勤務。
平成30年、司法書士江上慎也事務所開業。
趣味は登山・キャンプ、楽しくお酒を飲むこと、映画鑑賞や博物館めぐりです。
小学校の親父の会等の地域のPTA活動にも参加しています。

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