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神は営業車にも宿る

愚公移山

公移山(2)「ある経営者の話」 【場を整える】―掃除②―
前回、「場を整える」ための一つである掃除の歴史と大切さについて話を進めた。ひと口に掃除といっても、あらゆる場所が対象となる。日ごろから気になりながらも後回しにしがちな営業車の状態も会社の業績と無関係ではない。

貧乏神が好む場所

「神は細部に宿る」という格言がある。ドイツ出身で世界三大巨匠に数えられる近代建築家ミース・ファンデルローエルが好んで使ったといわれている。出典は定かではないが、元々は芸術や建築などの分野で、「細かい所にまで大切にすることが素晴らしい作品を生む」という意味で使われていた格言のようだ。「悪魔は細部に宿る」という言葉もあり、興味深い。現在では、細かいことにまで気を配ることの大切さを説く例えとして広く浸透している。

日本人の哲学ともいえる「神道」では、「八百万の神」としてあらゆるものに神が宿ると考える。自然をはじめ様々な物や場に神を見出し、畏敬の念を抱く日本人の精神性と多種多様な神を受け入れる日本人のおおらかさを表すものであろう。富や幸せを与えてくれる神もいれば、疫病の神や貧乏神もいる。気になる貧乏神が好むのは、清潔感のない空間、物が散乱している場所などではなかろうか。一見、綺麗に見えていても四隅にホコリが溜まっている場所や普段は人に見せる必要のない場所が汚れていれば、貧乏神が住み着く。

あまり他人に見せる機会がない自家用車や営業車もその1つであろう。営業車は、皆で共有している場合はそれほどでもないが、個人専用の営業車は担当者も気を抜いていることがある。仕事がら営業車に乗せてもらうことが稀にある。きちんとした組織と感じる会社の車は、掃除が行き届いている。一方、多くの問題を抱えている会社の営業車は、車内にゴミが落ちていたり、後部座席に資料が散乱していたりしていてお世辞にも奇麗とは言えず、「貧乏神に目をつけられそうだ」と心の中でつぶやきたくなる。

次の車がグレードアップ

そういえば、「ある経営者」の車に何度が乗せてもら機会があった。毎回、洗車直後のように綺麗に磨かれ、車内もホコリすら見えないほど清潔に保たれている。なぜ、そこまで綺麗にするのかと訪ねると、「自分が使う物については、どんな物でも、まず与えられている事への感謝があります。車であれば、どんな車であれ天から乗るチャンスを与えられている状況に感謝せずにはいられません」と即答。続けて「最初に乗った車は、ローンで買った13万円の中古車で、暖房がきかず冬は毛布をかぶって運転していた。それでも、その車を大切にしていました」と楽しそうに振り返る。

真意を訪ねると「古い車でも大切に磨いていると、次に乗る車がグレードアップすると信じていた」からだそうだ。実際、その「ある経営者」の車は、買い替えるたびにグレードアップしてきた。だから、その経営者は、「車を汚している人は、車に乗る資格がないと」断言する。

そう考えるようになったのは、「父の影響もある」という。若いころから、「散らかっている家は災難に遭いやすい」「汚れた車は事故を起こす」と教えられた。社会人になって営業職につき多くの会社を訪問するようになると、自身の経験から「ホコリが溜まっている会社は、その時は勢いがあっても長く続かない。やがて廃れる」という確信を持つようになった。まさに、父の教えを自分の知恵にしてきたのだ。

「ある経営者」は、洗車や車内を掃除する際は細かいところまで気を配る。すると、小さな変化に気づくという。「些細な変化であっても、それが車の故障や事故につながる危険性もあるわけです。例えばタイヤに傷が入っていたら、すぐに交換したり注意深く経過を見ていればトラブルを未然に防ぐことができます。これは、経営と同じ」だという。細かいところに気を配る。その連続が事を成す力になるわけである。
たとえ車一台にも会社のあり方が現れることを考えれば、掃除をおろそかにできないはずである。

「愚公移山」(ぐこういさん・ぐこういざん)
      Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.174(2025年12月号)

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画像は2024年8月号です

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