Trend&News ■株式会社 嶋井精華堂
再開発が進む天神、博多駅周辺は、新しいオフィスビルが生まれ、それぞれに差別化を図っている。そのようななかで、株式会社嶋井精華堂(林田洋志社長)が建てた「メゾネットスタイルオフィス」は、入居者の使い勝手を最大限追求した新しい付加価値を有するオフィスとして企業からの関心を集めている。

博多駅から徒歩11分
「天神ビッグバン」で天神地区が、「博多コネクティッド」で博多駅周辺の再開発が進められ高層ビル建設が熱を帯びるなか、都市部における新しいタイプのオフィスが博多駅近くに完成した。福岡市博多区の株式会社嶋井精華堂(林田洋志社長)がつくった「嶋井ビジネスパーク」である。
「嶋井ビジネスパーク」は、博多駅から徒歩約11分、都市高速ランプ「博多駅東」まで車で約3分、国道3号から東に一筋入った通りに面する恵まれた立地にある。都市部を走る幹線の近くにも関わらず、思いの外静かな環境が印象に残る。
1180㎡の敷地に鉄骨造2階建の北棟と南棟の2つのオフィス棟が並び、北棟に3区画、南棟に4区画の計7区画がつくられた。建物の外観はシルバーを基調にすっきりとしたモダンなデザインになっている。
全区画で1階と2階がセットになったメゾネット型で、1階は58.5㎡~65.6㎡、2階は67.6㎡~112.64㎡と、広さによってAからEまでの五つのタイプがある。1階と2階をつなぐ階段も専用スペースとして使用できる。こうして各区画が入居者専用のスペースとして独立した形で使えるところが大きなメリットといえる。

用途に合わせて仕様を変えられる1階フロア
1、2階を利用できるタイプの事務所はあるが、多くは1階を倉庫、2階を事務所として利用できる作りになっている。一方、「嶋井ビジネスパーク」は1、2階ともに入居者の利用目的に合わせた使い方ができるのが最大の特徴といえるだろう。設備も全区画が独立空調と警備システムを採用している。
階別にみると、1階は事務所や会議室、ショールームなど利用目的に合わせてOAフロアにしたり好みの壁紙を張り替えたり、自由に仕様を変えられる設計になっている。倉庫としても利用できるよう、電動パネルシャッターも採用。その内側にフロントサッシを設置していることから採光や遮音、断熱にも優れた高い快適性を実現している。もちろん、トイレ完備で要望に応じてミニキッチンを設置できるスペースも確保している。
2階はオフィス仕様で、OAフロア対応、トイレ、ミニキッチン室を備えている。床から天井まで高さ約2.7メートルのガラス張りは十分な採光が得られ解放感を感じる。

新しい価値を生んでいる。

も備え付けられている。

各区に3台の駐車スペースを確保
各区画の前には車3台分の駐車場が付いている。駐車場代は賃料に含まれている。それ以上の駐車スペースが必要な場合は、月極の有料駐車場もある。賃料は、区画によって異なるが、月額56万7,402円から77万3,894円。
平日のトイレ清掃は、ビル側で実施する。このような専有部内にトイレがある建物は、従業員自らが清掃するか外部へ委託するのが一般的。それが、高層オフィスビルの共用部と同じように利用できるのは入居者目線に立ったサービスで良い。
道路の向かい側が公園というのも恵まれた環境といえるだろう。全方向をカバーする防犯カメラを設置し、セキュリティ機器も完備している。また、鉄骨2階建て構造のため、高層ビルと比べて地震にも強い。企業に求められる継続性の観点からも支持を集めそうだ。
「これまでの常識を超えたオフィス環境をご提供したいと考え、入居される方にとって使い勝手がよく安全性に優れた満足度の高い空間づくりを追求するため、東京などの最新の建物にも足を運び研究しました。おかげで、『メゾネットスタイルオフィス』という新しい付加価値をご提供できるオフィスができたと感じています」と林田社長は笑みをこぼす。

親しまれている公園がある。
今回の企画、プロデュースはこれまで2階建ての倉庫付事務所のパイオニアとして40年以上の実績と企画力を持つ株式会社理創(福岡市博多区、田中啓之社長)が林田夫妻の意向を受け、具現化したものである。「類似する建物は増えていますが、弊社は常に建物に新たな進化を求め、入居者の利便性向上だけでなく、何十年後も陳腐化しない建物の企画を行っています。その意味で、今回のメゾネットスタイルオフィスの可能性に一石を投じることができたと感じています」と資産活用・仲介事業部の益永将平氏は自信を深めているようだ。
再開発によって、天神と博多駅周辺にオフィスや商業施設の集積度が高まることは、街の活気には必要なことである。しかし同時に、人が集まることで賃料の上昇や交通渋滞、駐車場不足による料金の高騰などの問題も抱えることになる。それなら、高級感があって利便性と自由度も高く、安心できるオフィスに対する需要は高まるに違いない。

「歴史を伝えていきたい」
「嶋井ビジネスパーク」を建設する前、この場所には嶋井精華堂が建てた「嶋井ビル」があった。福岡は昭和20年6月の空襲で市街地が焼け大勢の人が家を失ったため、戦後の住宅難の解消は喫緊の課題であった。そのため、先々代社長は日本住宅公団(現在の都市再生機構、通称UR)の要請に応え土地を提供し共同で1、2階を貸事務所、3~5階を公団とするビルを建設し住宅を供給してきた。その契約が60年の満期を迎え、今回建て替えとなったわけだ。
嶋井精華堂といえば「博多三傑」と称される嶋井(島井)宗室の子孫が経営する会社で100年余の歴史を有する老舗でもある。宗室は、戦国時代、日朝貿易で巨万の富を築いた博多を代表する豪商である。豊臣秀吉の九州平定に協力するなどして秀吉からの信頼も篤かった。しかし、商人でありながら秀吉の朝鮮出兵に真っ向から異を唱えるなど豪胆な一面も併せ持っていた。
その子孫が明治時代に創業したのが、嶋井精華堂の前身で嶋井印刷所である。同社は当時上浜口町に印刷所を構え、活版印刷が主流だった当時、九州で最初にオフセット印刷を手掛ける大手印刷所として知られていたようだ。又、小倉出身の松本清張が1933年(昭和8年)に版下工の修業として働いていた逸話が残っているのも、400年以上続く老舗ならではといえるだろう。林田社長と先代嶋井安生氏の長女である林田社長の妻晶子さんは、「嶋井家の商人としての歴史を守り、新たに継続していくために」と、今回の嶋井ビジネスパーク構想に着手したという。
400年余の年月、商売を通して博多の発展に寄与してきた嶋井家がつくった新しい「メゾネットスタイルオフィス」。これからの資産活用法としても注目を集めそうだ。
会社概要
社 名 株式会社嶋井精華堂
住 所 福岡市博多区堅粕4-1-12
代 表 林田洋志
設 立 明治27年(1894)
事業内容 不動産賃貸業
Trend&News Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.166(2025年4月号)
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