経営者と税理士と節税 ■井上税理士事務所 所長 井上 伸一
所得税の確定申告が始まりました。2月中旬から申告の受付は始まりますが、私の事務所では12月決算の申告や本来は1月中に終了しておかなければならない業務がダラダラ続いて本格的に作業に取り掛かるのは2月末からとなるのが恒例となっています。毎年、申告書を作成する方々の一覧を作成するのですが、年々その数が増えていき、「本当に期限内に終了するのか」と不安になりますが、いつものことですが3月15日には終わっているので不思議なものです。
このように3月といえば所得税確定申告のイメージなのですが、合わせて3月決算法人の決算や4月以降の法人運営方法等の打ち合わせの月でもあります。タイトルに「法人から個人への資産移転」と表記しましたが、難しい言葉に聞こえるかもしれませんが、法人が経営者に支払う役員報酬や家賃等も資産移転の一部です。
皆さんはどのようにして役員報酬や賃貸料の金額を決めているでしょうか。多くの場合、顧問税理士と相談して決めていると思います。では、何故、今の役員報酬の額が適当であるのかをご自身で説明できますか。
最近の傾向として、法人税率は下降傾向、逆に所得税率は上昇傾向です。おそらく、この乖離はどんどん大きくなるでしょう。平成27年からは所得税の最高税率は45%となりますので、住民税率の10%と合わせれば55%(復興税を除く)となります。高額の報酬をもらっている方は、半分以上が税金となります。
では、所得税の支払いを避けるために役員報酬の金額を下げ、法人に利益を残して法人税を支払うようにしますか。法人と個人の財布を同じだと考えれば、高い役員報酬をもらう場合よりも残るお金は増えます。しかし、会社に残ったお金はどうしますか。設備投資に利用する等々、色々あると思いますが、経営者の中には「なんとか自分のものにしたい」と思われる方もいます。会社に蓄積されたお金を経営者が得るにはどんな方法があるでしょうか。一般的な方法としては役員退職金ということになると思います。退職金であれば、退職所得控除額もあり加えて1/2課税になりますので、所得税もお得になります。しかし、退職金なので通常は退職しないと貰えません。「年を取って、そんなに多くのお金はいらない。若い時にまとまったお金が欲しい。」と思われる方もいらっしゃいます。
高い所得税と低い法人税の状況の中で、どのような方法が最も良い手段となるのでしょうか。ご自分に合った資産移転の方法を検討すべきです。
経営者と税理士と節税 Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.165(2025年3月号)
プロフィール
井上 伸一(いのうえ しんいち) 【税理士】
井上税理士事務所 所長
昭和46年、福岡県生まれ。長崎青雲高等学校、立命館大学法学部卒業。
平成11年、税理士登録。平成23年、井上税理士事務所開業。
中小企業の経営指導のほか、企業経営者・医師等に向けて各種セミナーを行う。
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