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箱島神社と鎮懐石八幡宮(糸島市)

神社訪ねある記

エッセー 神社訪ねある記  ■箱嶌 成風

玉手箱 秘めたる島の 水仙花

ポカポカ陽気の糸島路を宇野さんと走っていた。「箱島神社」を訪ねて1月22日のことである。西九州唐津行きの都市高速を糸島インターで降りしばらく静かな山の中を走った。海沿いの202号線、唐津街道に出る。右手に、すこし赤くなりかけた午後の太陽の下を蜃気楼のような大型船が玄界灘を西に向かって航行していた。

「私の姓と同じ箱島の神社の由来が気になりますね。来歴を知りたいですな」
「なにか関わりが見つかると面白いですね。神社に常駐の神主は居られませんが鎮懐石八幡宮に箱島神社の御朱印が置いてあるそうですから、後でそちらへも回ってみましょう」

加布里を過ぎ、右手の船越湾の真っ白な浜辺に細い砂州が伸び、巨岩に守られた松林の小島が見えた。冬の波が白く打ち寄せている。鳥居が建っている。道脇に「箱島」と書いた案内板があった。竜宮城のような箱島神社への入り口である。辺りは駐車禁止になっており、唯一、直ぐ近くの和海(なごみ)という料理屋の有料パーキングに車を止めた。浜に向かって細い坂道を竹藪を手で押し分けながら降りていった。引き潮で島まで歩いて渡れた。近寄るととてつもなく大きな岩石に護られた島である。鳥居に「箱島神社」の扁額が掛かっていた。案内板に恵比寿(えびす)様と愛染明王(あおぞめみょうおう)が主神と書いてあった。商売と恋愛の神様である。

欲と色の守り神であった。また、耳の神様でもあるらしい。それ以上の来歴は分からない。後で知ったことだが江戸末期、聖福寺の仙厓和尚が度々訪れ、竜宮城の玉手箱がこの島に埋めてあると歌で詠んでいる。箱と島の合体は仙厓和尚のアイディアなのだろうか。巨岩の隙間を這うように登ると小さな箱島神社のお社が海を背に立っていた。神棚の中に1本の火吹き竹が置いてある。この竹筒で耳に空気を吹いてもらうと耳の病気が治るらしい。老人性難聴で苦労している私には有り難い話だ。早速、宇野さんに両耳に吹き込んでもらった。かすかな潮騒の響きのように聞こえた。効き目がでるには時間がかかるらしい。
戦前、島の磯に遊興の料亭があったそうだが昭和18年の台風で吹き飛ばされ、それ以降は建てられていない。湾上に優美な可也山が見える白砂の絶景は手つかずの自然のままが良い。帰りに若いアベックとすれ違った。愛染明王を拝みに行くのだろう。

島を後にし鎮懐石八幡宮に足をのばした。唐津に向かって202号線を車で15分も走ったであろうか、二丈深江辺りで鎮懐石八幡宮の看板が見えた。平行して走る筑肥線を横切ると細道の奥に社務所があり、そこに車を止めた。宮司様はお忙しいようで案内書きだけいただいて、左手の小高い丘の上にあるご本殿に参ることにした。目白が群れる寒椿と山茶花が咲きこぼれる中に一の鳥居が建っていた。いくつもの石碑が並んでおり、中でも1300年前、ここを訪れて歌を詠んだ山上憶良(やまのうえのおくら)の万葉の歌碑は歴史の真実を物語っていた。

急勾配の登り階段を見上げて男坂の厳しさに息を飲んだ。あえぎながら登り着いた頂上から振り向くと糸島の地形をパノラマのように見下ろすことができた。手が届きそうな波間に野村望東尼が幽閉され高杉晋作らが救出に行ったと言う白波が寄せる姫島が見えた。
恐そうだがどことなくユーモラスな表情の狛犬さんに護られてご本殿はあった。神功皇后と応神天皇そして老臣、武内宿祢(たけのうちのすくね)が祀ってある。皇后はこの時お腹に応神天皇を身ごもられて臨月間近のお身体で三韓制圧に出征されている。出産を遅らすため2個の小石を鎮懐(ふところしずめ)として腹帯に挟まれていた。無事凱旋し、宇美の里で応神天皇を出産された。この2個の石を糸島の子負ケ原に奉納され鎮懐石とされたと記紀にも記されている。

社前に「願い石」という卵形でつるつるのラグビーボール大の石が置いてあった。撫でると願望達成の御利益があるらしい。安産のお守りとしても多くの人に参拝されているそうだ。帰りは急な階段を避け、脇の山道をご婦人方の後についてゆるゆると降りてきた。

山茶花や 休み石ある 女坂

■箱島神社 
住 所 福岡県糸島市二丈浜窪86
御祭神 塞坐三柱大神(さやりますみはしらのおおかみ)
    西宮大明神(にしのみやだいみょうじん)
    愛染明王(あいぜんみょうおう
URL  https://www.chinkaiseki.com/island/

■鎮懐石八幡宮 
住 所 糸島市二丈深江2143-1
御祭神 神功皇后
    応神天皇
    武内宿禰
URL  https://www.chinkaiseki.com/

神社訪ねある記  Bis・Navi(ビス・ナビ)Vol.165(2025年3月号)

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著者:箱嶌八郎(成風) 氏
有限会社タオコーポレーション・風水家相タオ設計工房主宰。
福岡市生まれ。当仁小、中学、修猷館高、早大卒。
西日本新聞TNC文化サークル・風水教室講師・もの書き屋・エッセイスト。
・第23回森鴎外記念北九州市自分史 文学賞
・第50回福岡市文学賞
・第3回子母沢寛文学賞「愛猿記賞」 等々大賞受賞。
著作:「されど風水」あり。

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