経営者の知恵を後継者に残すことで100年企業の基礎を築きませんか

不利な状況も発想の転換で価値創造のきっかけとなります

承前啓後

承前啓後 アイディア編(7)  ■異業種交流会「VAV倶楽部」会長 近藤昌平さん

「ファンシー」に始まり「景氣快福ケーキ」や「黒字体質ケーキ」など幾つものヒット商品を生み出した近藤さん。そんな近藤さんには、「洋菓子業界の革命児」という異名があった。和菓子から洋菓子に転向し、世界初となるケーキの会員制宅配ビジネスを成功させ、さらにオリジナル記念菓子市場を開拓するなど、独自のビジネススタイルが菓子業界に新たな可能性をもたらしたということだろう。
記念菓子では、お菓子を入れるパッケージが大きな話題を呼び、企画したパッケージが次々と需要を生み、作りに作ったオリジナル記念菓子は1000個近くにもなった。
今号から数回に分かって、近藤さんが創り出したオリジナル記念菓子の誕生秘話を交えて、アイディアを形にした経緯を紹介したい。

■大きな転機となった日経新聞社長就任の記念品

私が名古屋から東京に進出したのは、昭和56年(1981)年3月15日。六本木にマンションを借り、住居兼事務所・店舗でのスタートです。東京は地代が高く店舗や工場はとても持てません。菓子店としては非常に不利な状況でした。
しかし、考え方次第で状況は変えられますから、この不利な状況を逆手にとって「これまでにない売り方ができないものか」と考え続けました。そして出した結論が、「近くに工場を持てないために生のケーキが提供できないなら、クッキーなどの焼き菓子を売ろう」というものです。それも、会社の周年記念や社長就任、新社屋完成披露。個人であれば長寿や受賞、襲名などを祝うオリジナルの記念菓子を作ろうと考えました。オリジナル商品は、全て受注生産になりますから在庫を持つ必要もありません。

オリジナルパッケージづくりは、歌舞伎俳優の松本幸四郎さんの3代目襲名披露の記念品を作ったことから広がったのですが、大きな転機となったのが日経新聞の社長就任祝賀会で配られた記念品です。昭和57年(1982)、森田康さんが日経新聞社の新社長に就任されるので、祝賀会が開催されるという話を取材に来た記者さんから聞きました。この時、記念品が配られるのです。

そこで、親交のあったテレビ東京の中川社長さんから森田社長さんを紹介していただき日経新聞社にうかがうと、担当の方から「既に百貨店に見本を取り寄せたから難しい」と半ば断られました。しかし、「僕だったらもっともっと素晴らしい面白いのをつくりますよ」と啖呵を切って、自分のアイディアをお話したのです。パッケージに日経新聞で掲載された実際の記事を入れ、それをアイボリーのキレイな紙に金箔で文字を印刷したら、とても美しいパッケージになるとお話すると、森田社長さんが大変興味を持たれ私のアイディアが採用されたのです。中にはおいしいブランデーケーキなどを入れました。

パーティーは東京、大阪、名古屋、福岡、札幌で開催され、1つの会場に1000~3000人ほどの方が来られましたから、社員さんなど関係者も含めると大変な人が記念品を手にされたことになります。パッケージは型代や材料代などでかなりのコストがかかりましたが、森田社長さんに企画を提案した際、「気に入らなかったらお代はいりません」と大きなことを言ってしまいましたので、反応が芳しくなければ大きな損失を出したかもしれません。
しかし、手にされた方々からの評判が大きく、「うちにも作って欲しい」とお声掛けをいただくようになりました。作品が次のお客様をどんどん呼んできてくれたのです。相手の期待以上の価値を生み出すことができれば、商いも人間関係も上手くいくということを改めて実感した事例でした。

※「承前啓後」:受け継いだものや知恵を大切にし、未来を切り拓くことを意味する

承前啓後 Bis・Navi(ビス・ナビ)Vol.164(2025年2月号)

プロフィール

近藤 昌平(こんどう しょうへい) 氏
異業種交流会「VAV倶楽部」会長、株式会社銀座・トマト会長。
ケーキの会員制宅配を日本で最初に事業化、2万7,000人の会員を組織したり、アイディア商品を次々にヒットさせ、「アイディアマン」「洋菓子業界の革命児」と呼ばれた。
1980(昭和55)年には異業種交流会「VAV(バブ)倶楽部」を設立。以来、45年にわたって出逢いとビジネスチャンスの機会を創出してきた人脈づくりの達人でもある。
【著書】
 『お礼とサービス、やり過ぎるくらいがちょうどいい』(PHP)
 『人様に可愛がられる人になりなさい』(ダイヤモンド社)
 『人脈を作りたかったら、名刺を捨てなさい』(サンマーク出版)
 など

●異業種交流会 「VAV倶楽部」 http://www.vavclub.com/
●株式会社銀座・トマト https://ginza-tomato.co.jp/

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画像は2024年8月号です

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