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AIを活用し広告の費用対効果を可視化

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Trend&News 株式会社NextStairs(ネクストステアーズ)

広告の費用対効果を計ることは難しい。売上に直結するものからイメージの向上、求人採用、ブランディング、特定のイベントや取組みへの支援などスポンサーによって広告を出す目的が様々で、近年ではネットやSNSの普及で媒体の種類も増えた。そのため、広告を出稿する媒体や広告の出し方がますます難しくなっていると感じるスポンサーも多い。株式会社NextStairs(ネクストステアーズ、福岡市中央区、万井拓馬社長)は、AIを活用してスポーツに特化した広告の費用対効果や社会貢献度を可視化するサービスを提供し注目を集めている。

広告の費用対効果は計りづらい

万井拓馬社長

企業は、強いスポーツチームや人気のスポーツ選手のスポンサーになることで、自社に対するイメージの向上、提供する商品、サービスの認知度を高めようとする。一方では、ひと昔前と違って新聞やテレビ、雑誌に加えてインターネット、ソーシャルメディアなど人々が触れる媒体が増えたことで、自社に有効な広告媒体を選定し、より効果的な広告を出すということがますます難しくなっているようだ。近年、ネットの普及で広告の閲覧数などを計算できるようになったが、スポンサー単位で社名や商品名などがどの程度見られているのか、それによってどのくらいの効果が期待できるのかを客観的に把握することは技術的なハードルが高い。そのため、広告を出すスポンサー側は、広告費に対する費用対効果が計りづらいという思いを抱えている。

このことについて、福岡市中央区に事務所を構える株式会社NextStairs(ネクストステアーズ)社長の万井拓馬さんは、「スポンサーシップを通じたブランド露出や認知度向上の定量的な効果測定は、直接的な売上増加とは異なり、複雑かつ難しい」と語る。同社はスポーツ関連に特化し、広告を出すスポンサー企業に広告効果を数値化する「メディア露出換算」と呼ぶサービスを提供し注目を集めているベンチャーだ。サービスの内容をひと言で表現すれば「スポンサーの広告が、実際にどの程度人目に触れているのかをAIを活用して数字に置き換え効果を明確にする」サービスということであろう。例えば、プロサッカーチームのスポンサー企業が広告効果を測りたいと万井さんに依頼する。万井さんは、スポンサーの広告が掲載されている媒体選びから露出した数などの情報を集める。選手のユニフォームにスポンサーの名前が表示されているのであれば、中継される試合の映像やスポーツニュース、新聞、雑誌、ネットニュースなど様々な媒体での露出場面と時間を調べる。期間は、一試合やシーズン全体を通してなど依頼主の要望に合わせる。ただ、膨大なデータの中からスポンサー名が露出している場面を探し測定するという作業は、人力に頼っていては処理できない膨大な手間と時間と多額の費用を要することになる。

広告効果を数値化

そこで同社は、AIに企業名や商品名、ロゴなどを記憶させ、媒体情報の収集から画像の認識といった作業をAIに指示すると、AIが一連の作業を驚異的な速さで処理する。まさに、AIの能力を生かした新しいサービスである。
このサービスは、佐賀県鳥栖市を本拠地とするプロサッカーチームで、現在J1に所属する「サガン鳥栖」からの依頼がきっかけだった。この時は、サガン鳥栖からのデータを基にテレビ放送、オンラインメディア、SNSを通じたクラブの広告媒体の露出価値を分析、マーケティング効果を定量的に評価した。

同社のサービスを活用すれば、サッカーだけでなく野球やバスケットボールなど他のスポーツにおいても効果測定が可能となる。サービスはスポーツに絞っているが、スポーツは大きな経済効果を生むだけに、自社の広告宣伝をより効果的に行いたいと考える企業からの依頼は増えるだろう。
設立3年目ではあるが、同社の取組みは注目を集め広がっているようだ。昨年12月、平和堂と「スポンサーシップ効果測定・評価(メディア露出価値換算・会場内外価値換算)契約」を締結したと発表した。平和堂は、滋賀県彦根市に本社を置き食料品・衣料品・住居関連品等の総合小売業で、大型ショッピングセンター「アル・プラザ」、小型食品スーパー「フレンドマート」をはじめ160店舗余を展開している。また、グループ企業でネットスーパーや外食、フィットネス、アミューズメント、書籍販売など一般消費者向け事業を手掛けている。今回の締結では、テレビ放送やOTT(ネット回線で動画や音楽などのコンテンツを配信するサービス)、新聞、オンラインメディア、SNSを通じたスポンサー広告媒体の露出価値を詳細に分析し、マーケティング効果を数値化し評価するというもで、「これにより、平和堂様のマーケティング戦略がより高い効果を得ることが期待できます」と万井さんは自信を見せる。

今年1月上旬にもサッカーチーム「東京ヴェルディ」を運営する東京ヴェルディ株式会社と「スポーツマーケティング (メディア露出価値換算)を行う契約」の締結を発表した。この契約でも、「パートナーの広告価値が数値的に可視化され、東京ヴェルディとパートナー企業がより戦略的なマーケティング施策を策定、実施することが期待できる」としている。

会場内外の効果や社会貢献度を可視化

今後の展開として、さらに2つの事業構築を模索している。まずは、会場内外での広告価値の可視化。試合会場やイベント現場でのスポンサー広告効果だけでなく、会場外でのメディア露出やデジタル領域での効果も数値化しようというものである。例えば、野球やサッカーなどは、選手のユニフォームなどの広告はメディアでも露出されやすい。しかし、スポンサーの広告は施設の壁面や施設外でも掲示される。つまり、カメラが向けられる頻度が低い場所や物にも来場者の視線は注がれる。そうしたメディアで流れる中継や映像では計測できない広告効果を数値化するものだ。

この会場内外での広告効果を数値化、可視化することで見せ方やアナウンスを工夫するなど改善点も見つかり、対策を打つことができる。AIを活用して時間や集客の状況など様々な条件によって最適な価格を提示することもできるようになるだろう。そうして会場内外での価値を高めるサポートができれば、バスケットボールやバレーボールなど屋内スポーツを応援する企業が増えるものと期待でき、すでに大学との共同実験にも着手しているそうだ。

もう1つは、社会的価値換算と呼ぶもので、万井さんは「スポーツチームの活動が地域社会やファンに与えるポジティブな影響を定量化します。その上で、CSR(企業の社会的責任)やSDGs達成への貢献を示し、スポンサー企業に新たな価値提案を可能にするもの」と語る。例えば、小学生を対象とするスポーツ教室を開催することが、どのくらい社会的に価値があるかということを算定し、これをSROI(社会的投資収益率)として示そうというものである。

この2つの取組みのための資金集めと事業に対する評価を求め、昨年12月クラウドファンディングを立ち上げた。当初の目標は500万円に設定していたが、開始3時間ほどで3倍余にあたる1,500万円超の資金を調達した。この実績を見ても周囲からの注目度の高さがうかがえる。スポンサー企業やスポーツチーム、施設運営会社に加えて、最近では大手広告代理店や研究機関からも関心を集め協同研究とのつながりも増えたという。

スポーツはルールを理解していれば、外国語が話せなくても試合の流れを理解することができる。国や地域を超えて協議に参加することも、それを応援者や観客として楽しむこともできる文化である。選手が全力で競技に打ち込む姿は、人々に感動や勇気を与える「影響力の強い」媒体にもなる。それだけに、広告の効果や社会的貢献度を可視化するサービスは、これからますます求められるだろう。

会 社 概 要

名  称 株式会社NextStairs(ネクストステアーズ)
住  所 福岡市中央区大名2-6-11
設  立 2022年(令和4)3月
代表者  万井拓馬
事業内容 スポーツ広告価値観換算事業、スポーツメディア事業
URL   https://brand-insight.com/

Trend&News  Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.164(2025年2月号)

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