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大分(だいぶ)八幡宮 (福岡県飯塚市)

神社訪ねある記

エッセー 神社訪ねある記  ■箱嶌 成風 

里神楽 歩み急がす 遠囃子

「12月1日(2024年)に飯塚市の大分神社で伝統的な獅子舞い神楽が催されるらしいですよ。行ってみましょうか」宇野さんに言われ一も二もなくOKで出かけた。
当日は福岡国際マラソンが午後から始まるので混雑を避け、すこし時間を早めて飯近市に向かった。八木山バイパスを通って筑豊の冬田の中を走った。暖冬のせいか刈田が芽吹き青々と穭田になっていた。
所々に「獅子舞フェスティバル」の看板が立っている。それを追っていくと遠くにこんもり鎮守の森が見えてきた。黄落間近な大銀杏が神社のシンボルツリーのように立って黄金色の落ち葉を参詣人に降らせている。田道の中を神社に通ずる一筋だけが石造りの舗装道路になって数百メートル伸びていた。

車を降りるとトントン、ストトンと遠太鼓の快いリズムに心が浮き立ってきた。歩道に面する表通りに一の鳥居が立っており大分神社の扁額が架かっている。大分(おおいた)ではなく大分(だいぶ)神社と呼ぶらしい。神功皇后ゆかりの幹回り9メートルの大楠様が本殿の総門を覆い隠すように枝葉を茂らせていた。

境内の右手に舞台が作られ笛、太鼓、鉦を打つお囃子衆が小笠原氏の三階菱の家紋を打った裃を着て演奏している。多くの観衆が手を打ちどよめいて集まっていた。舞台では金色のしゃぐまをかぶった青鬼と赤鬼が乱舞する三毛門神楽と言うらしい。ときどき舞台から飛び降り子供たちに大口を開けて脅し回る。「良い子にしてるか」とナマハゲの鬼のようだ。

お神楽の後、大分の獅子舞が始まった。この獅子舞は県の無形文化財に指定されている。赤いたすきがけの少年達が太鼓を打ち始めると笛と鉦を大人衆が演奏し、青獅子と金獅子が口をパクつかせて踊り出す。夫婦獅子らしく恋愛の踊りのようだ。子孫繁栄と五穀豊穣を祈る舞という。

享保9年(1724)京都の石清水八幡宮から伝わった放生会の奉納舞である。獅子舞衆が入れ替わり立ち替わり小一時間舞う重労働の演舞である。赤い鉢巻きと紐を背に垂らし、少年達が両足を踏みしめ交代で太鼓を打つ、眉根にしわを寄せ口を一文字に結び頬を赤らめて打ち続ける。太鼓のリズムで仲間とそして郷土との一体感ができるのだろう。生涯忘れない産土神(うぶすながみ)の息吹を吸ったにちがいない。神社の魔力でもある。

宇野さんと2人、獅子に頭を食われるサービスを受けた。何でも頭脳明晰になるらしいが、もう遅いと思いながらも帽子を脱いで獅子の金歯にパクパク噛まれた。焼きそば、タコ焼きなど香ばしい匂いの出店の裏に神社の由来書の石碑に出会った。

大分八幡宮は宇佐八幡の別宮として神亀3年(726)に創建された。応神天皇、神功皇后、玉依姫命が祀られている。朝鮮出兵から帰還した神功皇后の兵がこの地で軍団を解散、大きな分かれをしたので大分と言うと記してあった。ヤマト王権は熊襲征服に九州に来て、朝倉で羽白熊鷲(はじろぐまわし)に敗れ仲哀天皇が香椎の宮で急死、妃の神功皇后が熊鷲を討ち、朝倉で兵と兵糧を集めたと大己貴神社で聞いた。その後、兵を整え志賀海神社の阿曇磯良の水軍の協力で朝鮮に渡った。阿曇宮司がそう話された。新羅、高麗、百済を制し帰国は白い鷺に誘導され有明海の大川市の風浪宮付近で海の干満の差を利用して兵員を降ろした。水軍の指揮官、阿曇磯良はここで没したと風浪宮の宮司様に説明を受けた。ここから筑後川水系を登って飯塚にまわり筑後で招集した兵達を故郷に帰す大きな分れをした。本隊は遠賀川水系を北上し若松あたりからヤマトに向かった。そんな道筋が想像できる。 

これまでの神社巡りは神功皇后の行跡を追っていたことになる。神功皇后は実在したのではないかとふと思った。以前、義父が太平洋戦争に従軍しソ連の収容所(ラーゲリー)に入れられ四年後に舞鶴港に引き揚げてきた話を思い出した。義母が迎えに行と痩せ細って腰に空き缶とホーク1本入れて帰ってきたそうである。ここ大分宮でも帰還兵を待ち受けていた家族の姿が思い浮かぶ。「父母が頭(かしら)かき撫で幸(さ)くあれて言ひし言葉(けとば)ぜ忘れかねつる」万葉集の防人(さきもり)の歌であるが、こんな少年兵も沢山いたであろう。父母と抱き合う姿を大楠様は見ていたに違いない。

わずかの間に車のボンネットに降り敷いた銀杏の落ち葉も乗せて帰路についた。

大分八幡宮

住 所 福岡県飯塚市大分1272
創 祀 神亀3年(726)
御崇神 応神天皇(おうじんてんのう)八幡大神(やはたのおおかみ))、 神功皇后(じんぐうこうごう)、 玉依姫命
URL  https://www.daibu-hachiman.com/

神社訪ねある記  Bis・Navi(ビス・ナビ)Vol.163(2025年1月号)

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著者:箱嶌八郎(成風) 氏
有限会社タオコーポレーション・風水家相タオ設計工房主宰。
福岡市生まれ。当仁小、中学、修猷館高、早大卒。
西日本新聞TNC文化サークル・風水教室講師・もの書き屋・エッセイスト。
・第23回森鴎外記念北九州市自分史 文学賞
・第50回福岡市文学賞
・第3回子母沢寛文学賞「愛猿記賞」 等々大賞受賞。
著作:「されど風水」あり。

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画像は2024年8月号です

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