Trend&News ■株式会社メディアワールド

企業が長く事業を継続するためには、企業理念に加え時代の流れに乗るための変化への対応力が求められる。デジタル時代で変化がより速くなった今日では、なおさらであろう。福岡市中央区の株式会社メディアワールド(光武典隆社長)は、通信関連事業で創業したが、近年はサプリメントと化粧品を開発、ネット販売で事業領域を広げている。今月(2024年11月)は、新たに開発した薬用入浴剤の販売も始める。
自身の経験が開発のきっかけ
2024年11月に入り、乾燥の季節を迎えた。気温が下がり空気が乾燥すると、呼吸器系の粘膜が傷つきウイルスが体内に侵入しやすくなる。また、角質層にひびが入り細菌の侵入による皮膚トラブルなどを起こす原因にもなるといわれる。
サプリや化粧品の開発などを手掛ける株式会社メディアワールド(福岡市中央区、光武典隆社長)はこのほど、保湿や保温効果が期待できる医薬部外品指定の薬用入浴剤を開発した。商品名は、「Relliant(リリアント)」。1本500ミリリットル入りで価格は、6,300円(税別)。同社はこれまで、サプリメントや化粧品を開発してきたが入浴剤は初めて。代表の光武典隆さん自身の体験がきっかけとなった。
光武さんは、高校生の頃から時々、鼻炎やジンマシンなどの症状が出ることがあった。それでも、日常生活に支障をきたすほど深刻なものではなかったため、本人もさほど気にすることもなかったようだ。
しかし、13年前の2011(平成23)年、40歳でアトピー性皮膚炎が発症。それまでに経験したことのない痒みに悩まされることになる。痒みに耐えかねてかきむしると皮膚は剥がれ、血がにじむこともあった。医療機関を受診すると、ステロイド剤を出されるが、「できるだけ使いたくなかったので最小限使用する程度」にし、医者で処方してもらった漢方薬を煎じて飲みながら地道に治療を続けた。食生活も改めた。肉食を減らし、食物繊維を摂取するよう野菜中心の食事を心がけた。
養生の甲斐あって、次第に症状は治まった。「当時、強いストレスを抱えていたため、それて免疫力が低下しアトピーが発症したのではないか」と本人は分析している。アトピーの症状は治まったが、不摂生や無理が重なると顔など体の一部に痒みを覚る。ジンマシンが出ることもあるという。
そうやって、時々でる多少の痒みとも付き合いながら日々の仕事に追われる毎日を送る。そんななか、2年程前だが、温泉に入る機会があった。温泉から出ると体のムズムズする感じがなくなっていた。光武さんは、温泉が皮膚の炎症を抑えることを自ら体感することになった。しかし、温泉地から離れた福岡で生活している光武さんにしてみれば、その温泉に毎日通うというのは現実的ではない。
「それなら自分でつくろう」と思い立った。ちょうど、サプリメントや化粧品の他に新しい柱を作りたいと考えていた頃でもあった。
「塗る」から「浸る」へ
さっそく、開発に取り掛かるわけだが、入浴剤は、「医薬品医療機器等法」(旧薬事法)で規制され、使用目的や成分等によって化粧品と医薬部外品に分類される。医薬部外品は、治療を目的として開発された薬ではないが、効果効能を謳うことができる成分が一定の割合で配合されているもの。医薬品が治療目的であるのに対し、医薬部外品は薬に準ずる予防や衛生を目的としたものと位置付けられる。つまり、医薬部外品は、医薬品と化粧品の中間に位置するものといえる。当然、医薬部外品の開発となれば化粧品よりも厳しい基準をクリアする必要がある。
光武さんは、化粧品よりも基準の厳しい医薬部外品に分類される入浴剤の開発を目指したいと、受託メーカー探しを始めた。それまで入浴剤のメーカーと直接取引する機会がなかったので、情報収集から始め東京のメーカーとの取引を始めた。入浴剤には、「グリチルリチン酸2K(グリチルリチン酸ジカリウム)」と「カミツレ抽出液」の2種類の薬用成分を主成分として配合している。「グリチルリチン酸2K」は肌荒れに効果的な甘草(カンゾウ)という植物の根からとれ、ニキビや肌荒れなど肌のトラブルを抑える効果が期待できる。「カミツレ抽出液」はカモミールから抽出され、肌荒れやニキビ、冷え性、神経痛、疲労回復などの薬用効果が期待される。他にも13種の植物エキス、美容エキスも配合している。使用法は、1日につきリリアント20ミリリットルを浴槽に入れてゆっくりとかき混ぜるだけだから通常の入浴剤と同じである。
開発にあたって光武さんは、「塗るタイプは部分的な腫れや痒みなどには効果的ですが、手が届かないところや見えづらいところなどになると苦労します。全身浸かる入浴剤なら手軽ですし毎日使えます。痒みや痛みは日常的に感じることもありますから、手軽で毎日使えること」を重視した。確かに入浴剤は浸かるだけで良いから、継続して使いやすい。「塗るから浸る」という発想は、まさに、体験者ならでは。つまり、光武さん自身が毎日使える商品を作ったというわけだ。
サンプルの第1号が手元に届いたのは1年ほど前。それを自分で試しながら、改良を繰り返す。完成が近くなると、友人などにも使ってもらい意見を聞いた。使った人たちからは「肌がしっとりする」「保温効果も高く、それが長時間持続する」と好評だった。
クラウドファンディングでも好感触

そうしてこのほど、製品化にこぎつけ11月から販売を始めた。販売を前にマーティングとPRを兼ねて、クラウドファンディングを活用してみたところ、当初の目標額を大きく上回る支援を得たことで、手ごたえを感じている。商品の発売元は関連会社の株式会社ユーコネクトが手がけ、ネットを主軸としながら、既存商品の取引先にも卸していく予定だという。
ネットの世界は変化が激しい。ネットが職場や家庭に広がった頃、ネットユーザーはグーグルやヤフーなど検索エンジンを使って情報を探した。そのため、ネットではリスティング広告を活用する広告主が多かった。しかし、SNSが普及した今、若者はじめ多くの人は検索エンジンよりも手軽なSNSを使って情報を探すようになった。例えば、食事をする店を探す際、以前はグーグルやヤフーの検索エンジンで調べていたが、今は、インスタなどSNSを使うようになった。
SNSの活用がポイント
SNSの台頭で大きな影響力を持つようになったのは、インフルエンサーと呼ばれる個人である。つまり、個人が情報を発信する媒体となり、従来のメディアに匹敵、或いは凌ぐ程の力を持つようになったのである。そのため、広告主たちは、より強い影響力を持つインフルエンサーの活用を重視するようになった。アメリカ大統領選挙でもインフルエンサーを活用して支持者の獲得を図っているようだ。この流れはしばらく続くだろう。
従来型の広告は、企業など売り主が商品をPRするスタイルであったが、今は、ユーザーにとって役に立つ情報や共感できる人の評価を求めるようになってきた。この流れに対応できるかが、ネットでの販売に大きな差が出ると言われている。
同社では、半年ほど前から「肌改善研究所」というサイトを運営し、美容に関する情報を発信している。ここで、ある程度の数のユーザーが集まってから、商品情報サイトの紹介などを行う予定である。いわゆるユーザーが求める情報を提供することに徹している。こうして環境を整えながら、インスタグラムでの展開を始めた。今後、影響力を持つインフルエンサーを活用して、販売に結び付けていきたいと考えている。
「早く商売がしたかった」
光武さんは「早くから商売をしたいと思っていました」と語るように、子供の頃から商売に関心があった。商売をしたいという意欲はあったが、学校を卒業したてで社会経験も少ない若者に自分が進む道を描けていたかというと、そこまで明確なビジョンを描いていたわけではない。「何をしたらいいかが分からなかった」ので、システムエンジニアとして就職し、社会人としての経験を積んでから、営業の世界に入った。
最初は、携帯電話の販売を始めた。当時は、携帯電話が市場に出始めた頃で、まだまだ市場は小さかった。しかし、光武さんは、「携帯はこれから売れる」と思い、キャリアの下で販売を始める。1年程で販売実績を積み上げ、法人成りするとNTTドコモの一次店と直接取引できるようになり、さらに実績を積む。弱冠23歳の頃である。
その後は、衛星放送やマイラインなど通信事業の世界で実績を上げ事業を拡大する。その後、ネットが普及するのに合わせて企業向けのサイト構築やコンサルティングに主軸を移した。
大きな転機が訪れたのは、12年前。それは、知人が取り扱う「ミドリムシ」との出会いだった。ミドリムシとは微細藻類ユーグレナの和名で、五九種類もの栄養素を含む藻類。食糧不足が不安視されるなか、多くの国の研究者がミドリムシの培養法について研究を行っていたが、東京大学発ベンチャーの株式会社ユーグレナが世界で初めて屋外培養に成功したのだ。ユーグレナは、ミドリムシを配合した商品の開発に乗り出した。知人が紹介してくれたのも、同社が開発したミドリムシを原料としたサプリメントだった。
ミドリムシが自社ブランド立ち上げのきっかけ
光武さんは、この商品の取り扱いを始めた。自社サイトを使って販売する他に卸も手掛けると、これが思いの外よく売れた。そこで、光武さんは、ユーグレナのミドリムシを使った自社ブランドのサプリ「ミドリムシエメラルド」を作った。これが、自社オリジナル商品の第1号となった。
光武さんの狙い通り、ミドリムシエメラルドはヒットした。そして、自社ブランドの企画から製造、販売までを一貫して手掛けた経験は、メディアワールドに貴重なノウハウをもたらした。サプリ事業を大きな柱に育てるために、新たなサプリの開発にも取り組んだ。ミドリムシの次に手掛けたのは、エミューオイルだった。エミューオイルはオーストラリアの国鳥エミューの油を精製して作られるオイルで、傷や打撲などの治療やスキンケアなどにも使われ、オーストラリアでは医薬品としても使われている。そのエミューオイルを使って作ったのが「エミューの雫」とエミューオイルを配合した石鹸「クリスタル石鹸」である。発売から10年、エミューの雫はミドリムシと並んで同社の看板商品に成長した。そうしてサプリと美容関連商品の開発を続け、今までに一六品もの自社商品を開発した。他社製品も併せると、サイトでの取り扱いは50品目にのぼる。サプリメントと美容関係のネット通販事業は、今や同社の大きな柱となった。

ムシエメラルド」

企業には変化への対応力が求められる。30年近く変化の激しい通信業界で自分の領域を作り上げてきた光武さんの語り口からは、穏やかな中に確固たる自信を感じた。自社商品の開発についても「良いものを提供したい。だから、自分の体験や私自身が欲しいものというフィルターを通して選んできました。これからも、そのルールは変わりません」と力を込める。これからの展開にも注目したい。



会社概要
名 称 株式会社メディアワールド
住 所 福岡市中央区舞鶴3-1-10セレス赤坂門2F
設 立 1995(平成7)年2月
資本金 1,500万円
事業内容 美容・健康商材販売開発事業、インターネット広告代理事業、Webサイト運営事業など
関連会社 株式会社ユーコネクト
URL https://www.media-w.co.jp/
Trend&News Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.161(2024年11月号)
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