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『だれのせい?』

絵本に学ぶ仕事術

絵本に学ぶ仕事術  ■有限会社ウーヴル 代表取締役 三宅 未穂子

今月の絵本は、映画『テルマエ・ロマエ』の原作者ヤマザキマリさん初の翻訳作品だ。
少し脱線するが、私の絵本の選書の基準は、初見の表紙絵とタイトル、巻末の作者紹介やあとがきからの直感。この時点では文章は本文を含めてじっくりとは読まない。文字の並びだったり、ストレートに目に飛び込む言葉たちによって決める。しかも、絵本に巡り合う機会がとても少ないため、ほぼ衝動買いの、まとめ買い。良いと思った絵本をとりあえず積み重ねる。そして毎月のこのエッセイのために、この一軍から取り出す。たいてい「なぜもっと早く読まなかったのだろうか」と思うのだが、今月の絵本もその類に入る。

絵本に戻ろう。丁寧な、だけど引き算の描写が美しい一冊。色のトーンも程よく調和されていて、物語の世界観は、小難しい哲学的要素が強いわりにとてもおしゃれ。主人公は森に住むクマの兵士。この誇り高い戦士を通して「自分の行いは最後には自分に返ってくる」を知ることができるのだ。
自慢の剣であらゆるものをなぎ倒したクマ。ある日、上流のダムから水があふれ、自分の砦が壊れてしまう。
「オレ様の砦を壊したのはだれだ?」(本文より引用)と、原因究明に出発したクマは最終的にその原因は自分が森の木を切り倒したせいで起こったことにたどり着く。

そこからのクマの行動が素晴らしい。
人は、何かの不都合が起こるとその原因を「誰か」「何か」のせいにしてしまうことが多い。よくよく考えてみると、「それは自分の早とちりや捉え違いだった」とわかっても、犯人捜しを改めることはなかなかできない。「あ、それは私だった」の素直さは問題解決を早めるが、「自分は間違っていない」の主張は事態をこじらせる。クマはさすがに勇敢な戦士だ。素直に認める勇気を持っていた。

巻末のヤマザキマリさんの言葉が素敵だ。
「まるで私たちの属する社会の象徴のよう」「問題の起因が自分自身にあったことを自覚し、罪の償いを経て、平和という安寧に行きつく」(あとがきから引用)
こんなリーダーのいる組織が増えたらいい。「ごめん」と心から言い合える関係性にこそ、明日へのイノベーションが起こることだろう。

作:ダビデ・カリ

絵:レジーナ・ルック-トゥーンペレ

訳:ヤマザキマリ
出版社: green seed books

「絵本に学ぶ仕事術®」   Bis・Navi(ビス・ナビ) Vol.161(2024年11月号)

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プロフィール

三宅 未穂子(みやけ みほこ) 
有限会社ウーヴル 代表取締役
2005年2月25日創立、翌06年3月15日同社設立。企業向け研修やキラキラ社員のプログラム(社員によるいい仕事のための自社内研修プログラム)業務改善アドバイスを手掛けている。

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画像は2024年8月号です

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